WBを難なくこなす“サッカーIQ”の高さ
三笘は、日本代表きっての理論派として知られている。川崎フロンターレのU-18に所属していた高校3年生のときにプロへの昇格を打診されたのだが、当時はプロでやっていくだけの実力はついていないと自ら判断し、筑波大学へ進学した経歴の持ち主だ。それは当時でも異例と言える決断だった。
ただ、大学でしっかりと力をつけて、古巣の川崎フロンターレにプロ選手として舞い戻ると、大活躍して日本代表に上り詰めた。なお、大学時代に書いた卒業論文のタイトルは「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」だという。
日本サッカー界を振り返ってみると、ドリブルが上手な選手といえば、天性の才能に恵まれているタイプや感覚派と言われる選手が多かった。
しかし、三笘は違う。昨シーズンはベルギーで、今シーズンはイングランドで活躍しているが、世界で通用するドリブラーとして認められつつあるのは、三笘が感覚だけに頼るのではなく、脳を使ってプレーをできるからだろう。自分の能力を冷静に分析し、(ときにはそれを言語化することで)課題を理解して、自らのプレーに反映することのできる理論派なのだ。
もっとも、冷静にチーム力を分析して、自分に必要なプレーがどのようなものかを考え、実行に移す小学生など普通ではない。澤田代表が断言する。
「当時の薫をみて、『小学2年生でこんなことができる子なんて、今までいなかったよね!』と我々は驚いていました。ものすごくドリブルが上手い子にはたくさん出会いましたけど、攻守の切り替えの重要性をあの年齢で理解し、ボールを奪われたらすぐに奪い返しにいくような子など見たことがありませんでした。とても冷静に状況判断できていたということでしょうし、そういう意味で、彼はあの頃から本当にすごい子でしたね」
歴史的勝利をあげたドイツ戦で、日本代表では初めてWBのポジションを任されながらもしっかりと結果を残せたのは、小学生にしてゲーゲンプレッシングを実行できた“サッカーIQ”の高さと無関係ではなかったのだ。
取材・文/ミムラユウスケ 写真/Getty Images
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