国民の約3分の2は14ある省庁の名前を
半分も答えられない
「政治的無知」の調査はアメリカで詳細に行なわれていて、それによると、平均的なアメリカ人は大統領が誰かは知っているが、それ以外の知識はきわめて心もとない。
「経済が重要だ」という人でも、失業率や経済成長率をおおよそでも知っている割合は半分以下だ。上院と下院でどの政党が多数派なのかの正答率も5割を切っている。しかもこれは選択式の質問なので、あてずっぽうでもある程度は正解できる。それを考慮すると、基本的な政治知識をもっている有権者は(よくても)2~3割程度しかいない。
この結果を見て「アメリカ人はバカだなあ」と笑っているわけにはいかない。2014年の国際調査では、平均的な日本の回答者は、失業率を大幅に過大評価し、殺人件数が減少ではなく増加していると誤解し、移民の割合を実際より5倍も多いと信じていた。
それでも日本の成績は14か国中3位(上位はドイツとスウェーデン)で、13位のアメリカよりずっとマシだが、日本人の約3分の2は政府の14の省庁の名前を半分もあげられず、大半は自分の選挙区の国会議員立候補者についてほとんど知識をもっていない。これでは「目糞鼻糞を笑う」で、ぜんぜん自慢できることではない。
国政選挙のような大規模な投票では、一人ひとりの一票の価値はかぎりなく小さく、アメリカ大統領選では1000万分の1から10億分の1とされる(州によって異なる)。議院内閣制の日本では計算はより複雑になるが、自分の一票で候補者が当選し、その候補者の所属する政党が(連立を含めて)国会で多数を占めて政権をとる確率は、せいぜい数百万分の1だろう。これは要するに、「一票の価値はほぼゼロ」ということだ。