年収1億円以上でヘッドハンティングするネットフリックス

ほんの10年ほど前まで、多くの知識人が、終身雇用・年功序列の日本的雇用が日本人(男だけ)を幸せにしてきたとして、「ネオリベによる雇用破壊を許すな」と大合唱していた。最近になってこのひとたちが黙るようになったのは、OECDをはじめとするあらゆる国際調査において、「日本人は世界でいちばん仕事が嫌いで、会社を憎んでいる」という結果を繰り返し突きつけられるようになったからだ、

しかも、これは必ずしも「ネオリベ改革」のせいではなく、バブル絶頂期の1980年代ですら、日本のサラリーマンよりアメリカの労働者のほうがいまの仕事に満足し、友人に勧めたいと思い、生まれ変わったらもういちど同じ仕事をしたいと考えていた。

日本的雇用と対称的なのがネットフリックスで、2009年、自分たちの人事方針を説明した社内文書「カルチャーデック」が一般公開されると、革新的なシリコンバレーですら大騒ぎになった。そこには、これまでの常識とはぜんぜんちがうことが書かれていたからだ。

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たとえば、有給休暇の制度は廃止する。これは有給がとれないということではなく、上司(マネージャー)が合意すればどれだけ(無制限に)有給をとってもいいということだ。同様に、経費精算の規則も廃止し、経費の使い方は個人に委ねられた。

どちらも人事の専門家から「そんなことしたら大変なことになる」と警告されたが、社員はこれまでどおり常識的な有給の使い方(夏とクリスマスシーズンの1~2週間の休暇と、子どものサッカーの試合を観戦するとか)をし、経費を悪用したりもしなかった。これは、社員を「大人」として扱うということだ。

あるいは、すべてのポストに優秀な人材を採用し、業界最高水準の報酬を支払うこと。ネットフリックスでは、必要な人材を年収数千万円、あるいは1億円以上でヘッドハンティングしているのだ。

ここまでなら、「そんな会社もあるのか」で終わるだろう。ほんとうに驚くのは、優秀な人材を採用するために、そこそこ優秀な社員(ただし期待には満たない)でも、解雇手当をはずんで辞めてもらうという方針だろう。だが、考えてみればこれは当たり前でポストに空きがなければ、新しい人材に来てもらうことはできない。