ゴールで待っているもの

「計算尽くの生き方なんて、もうイヤだ。ここからは自分のために100パーセントやっていきたい」(銀行員)

「こういう大の大人がボロボロになって、真剣になる日、仕事なんか休んでも出るものがある。大のおじさんが、お前、こんなクシャクシャになってるよって」(石工職人)

出場した選手の言葉には、サラリーマンなら誰しも一度は思い当たる羨ましさがある。しがらみだらけの現世を離れて、たまさか見つけた“非日常“の世界へ飛び込み、思い切り暴れ回りたい。その夢をかなえてくれるのが、このレースなのだ。

「ボロボロになってでも、這いつくばってでも、どうしてもあのゴールをくぐりたい。そしたら自分がもっと変われる気がする」

ある選手は、そう言った。
どれだけ体がボロボロになろうとも、たとえゴールできなかったとしても、選手たちはレースに出たことを悔いたりはしない。何度も挑む者だって、珍しくはない。

それだけの思いが詰まった、唯一無二のレースなのである。

#2「何のために生きるかを考えたときに「走る」ことを選んだ最強のサラリーマン30人」へつづく

【関連記事】日本一過酷な山岳レース「TJAR」の出場希望者は、なぜ増え続けているのか?はコチラから

取材・文/齊藤倫雄

《放送予定》
『激走!日本アルプス大縦断』
2022年11月5日(土)「不撓不屈の男たち」/11月12日(土)「挑戦の意味」両日ともに20時より BS1にて放送予定