デートDVとは何か。教わらないと分からない
来年の全面実施に先駆けて、昨年度(2021年度)から「生命(いのち)の安全教育」に取り組んでいる三重県南伊勢町立南勢中学校の養護教諭、中世古さゆり先生にお話を聞いた。
――南勢中学校が行っている「生命(いのち)の安全教育」について教えてください。
「本校では、1年生では年3回、2年生は年4回、そして3年生は社会に出る前の集大成として年6回、性暴力の話を含む性教育を行なっています。
性暴力については、文部科学省が公開している資料を活用したり、外部講師をお招きしたりしながら、主にデートDVについて生徒に説明、指導しています」
――具体的には、どのような指導をされているのですか?
「性暴力やデートDVについて学ぶには、前提として「よい人間関係とは何か」「ちょうどいい距離感とは」ということを知る必要があります。
南勢中学校は、ほとんどの子どもが一つの小学校から持ち上がりで進学しているため、入学当初から仲が良い反面、関係性がほぼ固定化しており、『新しく人間関係をつくり、よい距離感を学ぶ』という機会が少ないのです。
子どもたちの間には、『この子にはこういうことを言っても許される』『あの子に言われたら断れない』という長年培った無意識の上下関係のようなものがある場合があります」
――確かに、馴れ合いの中で、意図せずそうした関係ができていることもありますよね。
「はい、そうしたことの延長上にある行動や言動が、デートDVになる可能性もあるんだよという話をすると、『えー! そんなこともDVになるの!?』という反応が返ってくることもあります。
具体的には、『スマホの中を勝手に見る』だとか『デート中、ずっとおごらされる』だとか、暴力という言葉とはイメージが結びつきにくいような内容です。
子どもたちはいじめについて、よくないことだと小さなころから指導されているから知っています。それと同じように、デートDVも同様に指導されなければ気づかないんですよね。そこで、社会に出る前の彼らとデートDVとは何かを一緒に考え、段階的に教えるようにしています」