戦前の日本に集った、インド独立の志士たち

スパイスの輸入だけでなく、「東京スパイス番長」のメンバーでもあり、数々のカレーイベントを行ってきたシャンカール・ノグチさん。スパイスカレーに関する著書も多い「カレー界の有名人」だ。

そんな彼の祖父、L.R.ミグラニ氏は1930年代半ば、ジャーナリストとして日本にやってきた。

「ロイター通信や、東京放送局(NHKの前身)などのメディアで活動していたそうです」

戦前、日本のニュースを世界に発信していたミグラニ氏だが、もうひとつの顔があった。日本政府と協力して、イギリスからの独立を目指す活動家でもあったのだ。彼のような「独立の志士」が、当時の日本には集まってきていた。

その中心となったのがラース・ビハーリー・ボース氏であり、京都帝国大学(現・京都大学)に留学していたA.M.ナイル氏だ。ミグラニ氏はジャーナリストの仕事の傍ら、彼らとともに独立に向けて動いていた。

「みんなフリーダム・ファイターです」

当時の貴重な写真を、シャンカールさんが見せてくれた。自宅に飾ってあるものだという。

9月30日はクミンの日。日本のスパイスカレーブームの背景にはインド独立の志士の姿が_3
日本に拠点を持っていたインド独立の志士たち。中央下がラース・ビハーリー・ボース氏、右下がL.R.ミグラニ氏、下段左から2番目がA.M.ナイル氏(写真提供:シャンカール・ノグチ)

しかし、日本は敗戦。フリーダム・ファイターたちの夢も潰える。だが、1947年にインドは独立する。日本で活動していた人たちが思い描いていた形とは違ったものの、ようやくインド人は自由を勝ち得たのだ。