夫婦のあり方に変革が迫られているが…

しかし、問題はこれだけではない。会社に滅私奉公しないと出世できないのは男性も同じで、その結果、夫は残業+サービス残業で超長時間労働になって、とうてい家事や子育てを分担することなどできない(だから、日本の男性の家事負担率は先進国で最低になる)。

男性1日あたりの無償労働時間(赤)と有償労働時間(青)の国際比較(単位・分)balancing paid work, unpaid work and leisure (OECD)をもとに作成
男性1日あたりの無償労働時間(赤)と有償労働時間(青)の国際比較(単位・分)balancing paid work, unpaid work and leisure (OECD)をもとに作成

働いた経験のある女性ほど、会社の事情がわかっているので、「早く帰って家事を手伝ってよ」とはいえない。そんなことをすれば、夫の昇進が遅れて生活が苦しくなってしまうことをわかっているからだ。

こうして会社を辞めて専業主婦になった女性は子育てのすべての責任を一人で背負うことになるが、どれほど苦労しても、まわりは「専業主婦で楽なんでしょ」と思っているのでまったく同情してくれない。専業主婦は、じつはものすごく孤独なのだ。

「こんなはずじゃなかった。わたしだって働きたかったのに」と思っても、いったん正社員のキャリアを絶ってしまうと、よほどのことがないかぎりパートか非正規の仕事にしか就けない。かつての自分と同じ“バリキャリ”の独身女性たちを横目で見ながら低賃金のパート仕事をし、夫のいない家庭で家事も育児もすべて一人でこなさなければならない。

それでつい、愚痴をいってしまうこともあるだろう。しかしその夫も、長時間労働で疲れ果てている。どんどん儲かって給料も上がるならやる気も出るだろうが、多くの会社は業績が右肩下がりで、リストラされないよう必死に会社にしがみついているだけ、というサラリーマンもたくさんいる。夫だって、「こんなはずじゃなかった」と思っているのだ。

それで妻に対して、「オレは、仕事を続けたほうがいいっていっただろ。専業主婦になりたいっていったのは、お前じゃないか」と思わずいってしまう。こうして、幸福だったはずの家庭に不幸が忍び寄ってくるのだろう。

取材・文/橘玲

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