「ぬるい日本」でさっさと億万長者になる

東京大学のある文京区本郷の周辺にはベンチャー企業がたくさん集まっていて、いまでは「本郷バレー」と呼ばれています。そこで起業を目指す若者に「なぜシリコンバレーに行かないのか」訊いてみたことがありますが、その答えは「コスパが悪い」でした。

グーグルやフェイスブックに匹敵する成功を手中にすれば何兆円という莫大なお金と世界的な名声が手に入るでしょうが、人生を楽しく暮らすのにそんな大金は必要ありません。シリコンバレーには世界中から「神童」「ギフテッド」と呼ばれる天才が集まっていますが、そんななかでも成功できるのは何千人に1人で、確率的には0.1%以下です。

それに対して日本なら、ゲームやアプリを開発したり、シリコンバレーのイノベーションを日本風にカスタマイズして大手企業に売却するだけで数億円になるのだといいます。

日本は「失われた20年」を経ても世界第3位の経済大国だし、日本語という「非関税障壁」で外国企業の参入を困難にしています。だったら世界中の天才が集まるシリコンバレーではなく、「ぬるい日本」で億万長者になった方がいいと、本郷バレーの若者たちは考えているのです。

彼らの成功物語はだいたい同じで、VC(ベンチャー・キャピタル)に「こんなベンチャーを始めました」という案内を送ると「話を聞かせてください」という連絡が来て、自分たちの事業プランを担当者に説明します。次にまた別のVCが来るので、すでに最初のVCと話をしているというと、担当者の顔色が変わって「出資を検討させていただきます」となります。

3社目のVCが来たとき、「2社のVCから提案をもらっています」と話すと、さらに真剣になって、最初は100万円単位だった出資額があっというまに1000万円単位になります。