トム・クルーズやジョニー・デップには無い魅力
全編を通してあり得ないほどの、あの手この手のアクションシーンはもちろん見ものだが、その合間にブラピが見せるスットボケたおかしさが最高だ。
超高速列車のトイレのシーンでは、日本のウォシュレットから噴き出すドライな風を顔に受けて、うっとりとロン毛をなびかせるブラピ。
または列車が激突する衝撃で横っ飛びになったときに、車内のポットが頭を直撃して変顔になるブラピ。
カメオ出演のAランクスターと交わすギャクなど、本人が楽しんで演じているのが伝わってくる。ブラピには、キャラクターに親しみやすさを持ち込むユーモアのセンスがあるので、コメディ作品との相性が本当にいいのだ。
登場する悪役は、我らが真田広之やアーロン・テイラー=ジョンソン、マイケル・シャノンなど、いずれも個性的なオールスターキャストだが、ブラピが絡むと、相手の特徴を存分に引き出し、かつ本人もお気軽なムードで自分を活かす、という高度なパフォーマンスにいつも感心してしまう。
思えば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』での、レオナルド・ディカプリオとのバディな関係の絶妙なケミストリーでも、そのことが顕著だった。彼はレオを食うこともなく、かといってその独特な抜け感を持って寄り添い、結果、自分をも活かしていた。
これが、トム・クルーズやジョニー・デップなら、そうはいかないだろう。相変わらずのスターのオーラを放ちながらも、人の好い殺し屋を演じて、観客を笑わせるブラピの魅力を改めて感じた。
『ブレット・トレイン』
原題:Bullet Train 上映時間:2時間6分/アメリカ・日本・スペイン
公開中/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給
監督:デヴィッド・リーチ 原作:伊坂幸太郎
出演:ブラッド・ピット アーロン・テイラー=ジョンソン 真田広之 他
https://www.bullettrain-movie.jp/
イラスト・文/石川三千花