退路を断っての投手転向のはずだが…

野手として、バッターとしての未練。それは言葉の裏側に明確にあるものだった。また、立浪監督も当面は1軍で中継ぎ起用し、投げない日は代打、代走、守備固めなど野手としての起用も考えているという。

そう聞くと、一抹の不安を覚える。

甲子園の優勝投手として根尾がプロの世界に飛び込んだのは、2019年のこと。当時、投手として育てるか打者か、思案する球団に対し根尾は迷うことなく「野手一本でやりたい」と明言し、その道を踏み出した。

しかし、現実は厳しかった。中日の球団関係者が、こう言った。

「外野手としての守備力に問題はありません。むしろ上の部類でしょう。ただいかんせん、打てない。(プロの1軍レベルの)ストレートについていけない。これは致命的です」

若手打者の場合、例えば空振りばかりするが当たれば飛ばすとか、逆に大きいのはないがミートは巧いなど、どこかストロングポイントはあるものだ。しかし根尾の場合、悲しいかなそのアピールポイントが見いだせなかった。

「フリー打撃の練習でも、打席で迷いを見せる。ショートの守備でもステップや捕球態勢に安定感を欠く。立浪監督は『打撃より投手の方が大成するかなと思ってみていた』と言っていますが、内心では野手では厳しいと判断し、投手の可能性に賭けようと考えたわけです」
(前出・中日球団関係者)

つまりは退路を断っての投手転向のはず、なのだ。だが本人は、バッターとしての自分も捨てないという。なにも一本に絞らなければ大成しないなどと昭和のような言い切りはしない。とはいえ、やはり不安に思う。