メディアの役割

(会場からの質問) 

――司法記者に訴訟が助けられたと思うことはありますか。今、政治報道がものすごく弱くなっている感じがするんですが、司法でも、やっぱりメディアの役割が大事だと思います。先ほど、関心が薄くなる瞬間があるとおっしゃっていましたが、逆に記者のおかげで助かったという例はありますか。 

谷口 それは無数にあります。どうしても今、司法記者さんは、たくさんの事件のストレートニュースを出さなきゃいけない中で、訴訟に「勝った」「敗けた」みたいなことを書かれることが多くなるわけですけど、「訴訟には負けたけれども、法律が変わっていく」ということも多くて。 それは、裁判がひとつのメディアとして機能している、ということで。「そういうものがあるんだ」ということを、多くの人が語るようになるからです。 

日本の裁判は公開されてはいますが、傍聴席の数も限られているし、法廷で何が行われているかを伝えるのは、やっぱりメディアなわけです。 

時々私は「法廷に神が降りてくる瞬間」みたいなことがあると感じていて。 

その人の固有性を突破する普遍的なことが語られる、それが人々に感動をもたらす、みたいな瞬間です。それを伝えるのは、メディアの皆さんを置いて他にはいないんじゃないかと思っています。 

司法記者も、変わっていくんですよね。さっきの不妊手術の裁判などでもそうですけど、最初は「私、ちょっとよく分かりません」と言っていた記者さんが、いろんな原告の話を何度も聞いたり、そのことについて海外のことを知ったりする中で、「ああ、これは違うんだ、この人たちだけの問題ではないんだ」ということを、記者自身も知っていく、というプロセスがあって。 

その時に、やっぱりその記事はかなり力を持って、多くの人たちを巻き込んでいくな、ということを感じることがよくあるんです。

構成/稲垣收 写真/伊吹早織 

はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール
井桁 大介 (著), 亀石 倫子 (著), 谷口 太規 (著), 丸山 央里絵 (著)
はじめての公共訴訟 社会を動かす、私たちのツール
2026/5/15
1,012円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4087214109

社会の中で「おかしい」と感じたとき、不条理な壁に突き当たったとき、私たちは何ができるのか。差別、労働、環境問題、ジェンダー、社会保障──さまざまな課題に対し、裁判という方法で社会のあり方を問い直し、変革を働きかけるのが「公共訴訟」である。
本書は、実際の事例や当事者の物語を手がかりに、その歴史と役割を解説。公共訴訟はどのような戦略、連帯によって社会を変えてきたのか。裁判を「社会を動かすツール」としてとらえ、個人の声が制度や社会を変えていくプロセスと、その可能性を示す入門書。

同性婚訴訟、タトゥー裁判、大川原化工機事件、立候補年齢引き下げ訴訟……
もっと公正な社会を生きたいあなたへ

◆推薦◆
よりマシな社会をあきらめたくないすべての人へ。
ここに私と公共をつなぐ回路がある。
──哲学者 朱喜哲氏

少数の痛みは、「大したことない」ことにされやすい。
「こうなってほしい」が、感情の問題と一瞥(いちべつ)される。
公共訴訟はそんな社会の扉をこじ開ける、希望。
──NO YOUTH NO JAPAN創設者 能條桃子氏

自分たちの手で社会はどんどんよくしていくことができるなんて、なんだ、最高じゃないか。
──小説家 山内マリコ氏

◆目次◆
第1章 声をあげる人々、その物語──公共訴訟を知る
第2章 公共訴訟は社会をどう変えるか
第3章 公共訴訟の誕生と歴史
第4章 データで見る公共訴訟
第5章 なぜ数が少なく、勝ちにくいのか──公共訴訟の抱えるハードル
第6章 新たな動きが生み出す、新しい連帯
第7章 公共訴訟の未来

amazon 楽天ブックス セブンネット 紀伊國屋書店 ヨドバシ・ドット・コム Honya Club HMV&BOOKS e-hon