メディアの役割
(会場からの質問)
――司法記者に訴訟が助けられたと思うことはありますか。今、政治報道がものすごく弱くなっている感じがするんですが、司法でも、やっぱりメディアの役割が大事だと思います。先ほど、関心が薄くなる瞬間があるとおっしゃっていましたが、逆に記者のおかげで助かったという例はありますか。
谷口 それは無数にあります。どうしても今、司法記者さんは、たくさんの事件のストレートニュースを出さなきゃいけない中で、訴訟に「勝った」「敗けた」みたいなことを書かれることが多くなるわけですけど、「訴訟には負けたけれども、法律が変わっていく」ということも多くて。 それは、裁判がひとつのメディアとして機能している、ということで。「そういうものがあるんだ」ということを、多くの人が語るようになるからです。
日本の裁判は公開されてはいますが、傍聴席の数も限られているし、法廷で何が行われているかを伝えるのは、やっぱりメディアなわけです。
時々私は「法廷に神が降りてくる瞬間」みたいなことがあると感じていて。
その人の固有性を突破する普遍的なことが語られる、それが人々に感動をもたらす、みたいな瞬間です。それを伝えるのは、メディアの皆さんを置いて他にはいないんじゃないかと思っています。
司法記者も、変わっていくんですよね。さっきの不妊手術の裁判などでもそうですけど、最初は「私、ちょっとよく分かりません」と言っていた記者さんが、いろんな原告の話を何度も聞いたり、そのことについて海外のことを知ったりする中で、「ああ、これは違うんだ、この人たちだけの問題ではないんだ」ということを、記者自身も知っていく、というプロセスがあって。
その時に、やっぱりその記事はかなり力を持って、多くの人たちを巻き込んでいくな、ということを感じることがよくあるんです。
構成/稲垣收 写真/伊吹早織














