エアガンで追い回すようになった“兎狩りロード”

Aのお門違いの恨みから始まった、和威さんへのいじめと脅迫行為は、他のクラスメイトにも伝播していったという。

「A君だけでなく、他の生徒たちも『あいつに金を渡したなら、俺にも寄越せ』と要求してくるようになりました。最初にA君たちに渡したのは、1万円以上。それを6人の生徒で分け合っていました。

彼らは学校帰りにホームセンターに寄ると、僕の渡したお金でエアガンを買い、帰り道で僕を撃ってきました。彼らはそのホームセンターに続く道を、 “兎狩りロード”と呼び、僕を標的にしてエアガンを撃ち、追い回すようになりました」

加害者たちが和威さんに向けエアガンを撃った“兎狩りロード” (写真/本人提供)
加害者たちが和威さんに向けエアガンを撃った“兎狩りロード” (写真/本人提供)

しかし、和威さんはこうしたいじめの事実を家族に伝えることはなかった。なぜならこの時、和威さんの家庭は特殊な状況に置かれていたからだ。和威さんはこう振り返る。

「2月に母が脳梗塞を発症し、入院していたのです。病気の母にはもちろんのこと、仕事と家庭のことでいっぱいいっぱいの父に心配をかけることはできない。妹もまだ小学生で、相談なんてできない状況でした」

誰にも相談ができなかったと話す佐藤和威さん(撮影/集英社オンライン)
誰にも相談ができなかったと話す佐藤和威さん(撮影/集英社オンライン)

当時、毎日のように加害者に連れ回され、ホームセンターやゲームセンター、飲食店などで、加害者に代わって金銭を支払わされていたという和威さん。次第に帰りが遅くなる息子の姿に、最初に疑問を抱いたのは父だった。

「はじめのうちは、中学生になったらそういう付き合いもあるのかと思っていましたが、8時、9時とどんどん帰りが遅くなる。『7時までには帰ってきて』と約束しましたが、守られることはありませんでした」(和威さんの父親)

入院中の母も、見舞いに来る息子の様子から異変を感じ取っていた。

「あんなに明るかった和威の表情が段々と暗くなっていく。『学校に行きたくない』、『5月の宿泊訓練にも行きたくない』と言うけれど、理由を尋ねても話さないんです。

学校で何かあったのではないかと思い、担任の先生にも電話しましたが、『いつもニコニコ元気な和威くんですよ』としかおっしゃらない。『そんなはずはないのでは』と思いながらも、入院中で身動きが取れず、それ以上踏み込んで聞くことができませんでした」(和威さんの母親)