重度のPTSDと診断され、不登校を余儀なくされた

「学校側はいじめがあったことを認めはしたものの、和威にも加害者にもきちんと聞き取りを行なうことはありませんでした。発覚の2日目から連日、加害者とその保護者を連れて名ばかりの“謝罪”に訪れては、校長先生が生徒に『早く謝れ』と言うだけ。加害者の親御さんの中には、『お前の子どもが悪い』と激昂する人もいて、これのどこが謝罪なのかという気持ちにもなりました」(和威さんの母親)

佐藤和威さん(撮影/集英社オンライン)
佐藤和威さん(撮影/集英社オンライン)
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和威さんも当時の心境をこう語る。

「加害者たちからは『いじめがバレたら母親や妹に危害を加える』と言われていたので、パニックに陥ってしまって。謝罪に来る加害生徒と顔を合わせないよう、2階の部屋に籠るしかありませんでした」

21年10月、何者かによって自宅の塀に落書きをされた。和威さん家族への嫌がらせや誹謗中傷は今も続いているという(写真/家族提供)
21年10月、何者かによって自宅の塀に落書きをされた。和威さん家族への嫌がらせや誹謗中傷は今も続いているという(写真/家族提供)

謝罪に訪れる加害生徒から母親が聞き取る中で明らかになったいじめに関わった生徒の数は、およそ13名。クラスの男子生徒が15、16名ほどだったことから、クラスメイトのほとんどが大小の差はあれど、何らかの形でいじめに関わっていたことになる。

母親からの通報と被害届を受けた警察も加害者に対して聞き取りを行なっており、その結果、主犯格5名が児童相談所へ通告されている。

いじめの暴行で和威さんの足首に残った青あざ(写真/家族提供)
いじめの暴行で和威さんの足首に残った青あざ(写真/家族提供)

学校側はこうした加害生徒に対し、部活動の参加停止や別室登校、「更生プログラム」を実施するなどの対応を実施。

一方の和威さんは、いじめ発覚後からフラッシュバックに悩まされるようになり、主治医から重度のPTSDと診断され、不登校を余儀なくされた。和威さんの症状は進級しても改善することはなく、学校に行けない状態が続いた。

「いじめ防止対策推進法」が施行されたのは、まさにその最中のことだった。和威さんの代理人弁護士の辰巳裕規氏が解説する。

「いじめ防止対策推進法は2013年9月に施行されました。この時点ですでに和威さんへのいじめは終わっていましたが、いじめの影響による和威さんの不登校は続いていました。

和威さんの受けたいじめは『重大事態』に該当し、第三者委員会を設置、調査しなくてはならない事案でしたが、鳥栖市は和威さん側の要望を認めず、代わりに調査権限のない『いじめ問題等支援委員会』を設置するに留まりました」

加害者たちが学校に持ち込んでいたエアガンと弾(写真/家族提供)
加害者たちが学校に持ち込んでいたエアガンと弾(写真/家族提供)

いじめ防止対策推進法では、生命・心身・財産に重大な被害が生じた疑い、または相当期間(目安30日)の不登校を余儀なくされた疑いがあるケースを「いじめ重大事態」とし、学校や教育機関に対し、速やかに調査組織を設け、事実関係を調査することを義務づけている。

和威さんの事案はこの要件を満たすはずだが、その後も鳥栖市は「重大事態」の対象と認定・調査をする姿勢を見せず、学校側の責任についても「気づくのは不可能だった」と否定するばかりだった。