「約1年かけて原稿を書き、書き終えたタイミングで動画を投稿しました」
「音大おじさん」という言葉を聞いたことはあるだろうか。音大の演奏会や音大生の出演するコンサートに現れては迷惑行為をする男性を指す俗称だ。
その迷惑行為の内容は、「声掛けが長引く」「極端な批判やダメ出しをする」「出演者に連絡先の交換やSNSの相互フォローを迫る」「出演者の写真を撮影し、無許可でSNSにアップする」「最前列の座席からお辞儀の瞬間を撮影する」など多岐にわたる。
動画を投稿したのは、東京藝術大学出身のヴァイオリニスト原田真帆氏だ。卒業後は英国王立音楽院に進学し、現在は日本とイギリスを拠点に、演奏と指導をしつつ研究者としても活動している。研究テーマは「クラシック音楽におけるフェミニズム」だ。
「博士論文を書く中で、自分自身も男性至上主義的な考えに囚われていたことに気づきました。フェミニズムは『怖い』という印象があるかもしれませんが、『内省し続ける』というか、修行に近いようなものだと捉えています」
原田氏が「音大おじさん」の問題を意識するようになったのは学生時代にさかのぼる。
「藝大や知人の演奏会で衝撃的なおじさんを見ることが何度もありました。自分の演奏会にそういう人が来たら嫌だと思い、『嫌だとはっきり言おう』と発信し続けてきました。
博士課程でこの問題について書いた際、イギリスの人には衝撃的に受け取られました。フェミニズム研究を通じて『誰かが発言しないといけない』という話もしていました。
自身のYouTubeで触れていないことに罪悪感すらありましたが、どう話すべきか悩みました。約1年かけて原稿を書き、書き終えたタイミングで今回の動画を投稿しました」
動画では、具体的な迷惑行為の実例が語られている。
「極端な例では、行動が過ぎて藝大を出入り禁止になった人がいます。舞台裏や楽屋のほうに勝手に入ってきて、自分の“推し”とツーショットを撮りたがったり、あるいは自分は写らず、“推し”だけを撮って、それをわざわざ印刷して次の演奏会に持ってきたり。
また、ブログ等で演奏会の鑑賞記録を書かれる方がいますが、『演奏会後の対応が不愛想だった』とか『話しかけづらい雰囲気で、そういう面が演奏に出るのだろう』というように演奏とは無関係のことを書かれる場合もあります。
それが10代の演奏家に向けられる場合もあり、深刻なトラウマにつながる可能性もあります」













