劇伴の魅力とは
樋口監督が映像と同等か、それ以上に「音」にこだわる動機はなんなのだろう。
「僕らの世代はドラマ入りのレコードやテレビの音を録音したテープを何度も聴いて、映画やテレビの面白さを反芻していたんです。だから面白さを感じる基準が音なんですよ。絵がなくても音だけで面白いのが本物じゃないかって思うんです」
あらためて、映像作品における劇伴(音楽)の役割とはなんなのか、たずねてみた。
「絵は目をつぶると見えなくなるけど、音は耳をふさいでも(振動で聞こえるので)完全に遮断することができないんです。だから、観客の気持ちをコントロールする最大の道具は音じゃないかな、と思っています。
絵ではできないことが音楽にはできる。『音楽さえよければこのシーンは乗り切れる』という頼みの綱みたいなところがある。音楽なしの映画って考えられないです。ただ、他人が作った作品を観ると『ここは音楽いらないなぁ』と思うことがあります(笑)。
作っているときは、そのことに気づきにくいんですよ。どうしても不安になって音楽を付けすぎてしまう。自戒を含めて、今は音楽に頼りすぎる作品が多いかなと思います」
劇伴音楽は映像作品の一部であると同時に、サウンドトラック・アルバムなどの形で独立した音楽として聴かれることもある。劇伴を聴く楽しみ、劇伴の魅力とはなんだろうか。
「劇伴を聴くとイメージがふくらむんです。劇伴は映像に付けるものだから、音楽としては足りない要素がある。音が少なかったり、曲の展開が不自然だったり、短すぎたり。でも、その足りない部分が想像力を刺激して、自分のなかですごく豊かな世界を作り上げられる気がします。
音楽のジャンルとしては特殊なのかもしれないけれど、その楽しみを知ってしまった以上、もう逃れられないんです」
取材・構成/腹巻猫 撮影/落合隆仁












