『新幹線大爆破』の音響演出
2025年に公開(配信)されたNetflix映画『新幹線大爆破』は樋口監督のこだわりが詰まった渾身の作品である。音楽は岩崎太整が担当。これまでとは異なるアプローチで音楽作りに挑んだ。
「音楽の方向性を決めるために、岩崎さんから参考曲をいろいろ挙げてもらい、僕がそれを聴いた印象を岩崎さんに戻して、岩崎さんからまた曲をもらって、というやりとりを何度かくり返しました。
僕がテンプトラックを選ぶのではなく、岩崎さんから提案してもらう形にしたんです。僕が選ぶと、どうしても『昔のあの曲』みたいになってしまう。それだと自分の想像した範囲を超えることができないので、岩崎さんに選んでもらったほうがいいだろうと。そのやり方がうまくいって、海外の最新の映画音楽に近い音が作れたと思います」
岩崎は音楽を作るだけでなく、映画のなかでの音響のバランスにもこだわった。
「岩崎さんは『竜とそばかすの姫』の経験で、セリフと音楽をバランスよく聴かせるノウハウを学んだそうなんです。日本の映画って、セリフと音楽が重なるとセリフが聞こえづらくなったり、音楽の音量が下げられたりすることが多い。
でも、両方の音をうまく整音(音質の調整やノイズの除去などを行うこと)することで、音量を下げたりせずにバランスよく聴かせることができるんですよ。業界では『音のトリートメント』と呼ぶんですが、それを岩崎さんの提案で全部やりました。おかげで僕のイメージを超えた音が組み上がりました」
サウンドトラックには5分を越える長い曲がいくつも入っている。これも樋口のこだわりだった。
「観ている人は気づかないと思うんですけど、曲のなかで低音がずーっと鳴っていて、それをだんだん大きくしているんです。その音が耳に入ることで、観客がドキドキしたり、緊張を感じたりするように作っています。
だから、この映画は観始めたら途中で止めちゃいけないんですよ。Netflixだから止められるんですけど、一度止めて、トイレに行ったりしてから再開すると、『うわ、音大きい!』ってなってバレてしまう。それで音量を下げられてしまうとつらいので、最後まで止めずに観てほしいんです」
Netflixでは必須ではなかったが、立体音響の一種であるドルビーアトモス(Dolby-Atmos)の音響データも制作した。2025年10月には、その音響を使った期間限定の劇場上映が実現した。
「800トラックもある音を立体的に配置するために、4日くらいかけてダビングしました。地獄のように大変な作業ですけど、楽しかったですよ」












