「引退後は音楽番組も見られなかったし、音楽も聞けなかった」

引退後はその余韻に浸る間もなく、病気を患ってしまった愛犬の介護に奔走していたという。

「歌手としての活動を終える、最後のファンクラブイベントの日がちょうど愛犬の手術の日でした。その日は親に愛犬を預けていたんですが、イベントから帰ってきたら手術が失敗したという連絡があって……。愛犬は筋肉がどんどん弱っていって、歩くこともできなくなっていってしまったんです。

そんな状況で私はいてもたってもいられなくなって、すぐに動物の資格が取得できる専門学校に入学して、愛犬のためにできることを全力で学びました。

本当に日々忙しくて、引退のことを考える間もなかったです。いま思うと愛犬の存在が自然と歌手活動から自分を遠ざけてくれるための“導き”だったのかもしれません」

「完璧じゃなくていいと気づいた」“愛内里菜”を背負い続ける覚悟と30歳引退の真相「音楽番組も観られなかった」_3

引退後の生活について愛内は、自然と“避けていたこと”があったと語る。

「引退してからは、音楽番組は観られなかったですし、音楽も聴きたくないという状況でした。

音楽に関するものに触れてしまうと、あれこれ自分の中で音楽に対する思いがあふれてきてしまうのが怖くて、なるべくテレビを観たり、音楽を聴いたりすることは避けて生活していました」

そして引退から5年後の2015年、愛内は再び歌手として表舞台に舞い戻る。どういった経緯で復帰に至ったのか。

「再び歌い始めるきっかけとなったのが『THEカラオケ☆バトル』(テレビ東京)という番組から出演オファーをいただいたことでした。

その番組で、自分の曲ではなく、他の歌手の方の曲を歌ったのですが、それがすごく気楽で楽しくて。

自分の曲を歌うことは重荷でしたが、曲のカバーなら歌いたいなと感じて、そこからファンの方とも交流したいという思いから、年に2回だけ、カバー曲を披露するディナーショーを開催することにしたんです」

引退前のラストアルバム『LAST SCENE』のジャケット(写真/愛内里菜オフィシャルHPより)
 
引退前のラストアルバム『LAST SCENE』のジャケット(写真/愛内里菜オフィシャルHPより)
 

このディナーショーが彼女の運命を変えることになった。

「引退の時にリリースした最後のアルバムを手がけてくださった音楽プロデューサーの石井健太郎さんが、私の大阪のディナーショーに来てくれたんです。

実はそれまで実際にお会いしたことはなかったのですが、ディナーショーの時にはじめてお顔を合わせて、その時に石井さんが“愛内さんのためなら、また僕は曲書きたいと思っているんで”とお声がけしてくださり、たくさんのデモテープを渡してくださいました。

続けて石井さんに、“いつか歌いたいと思う日が来たら、このデモテープの中から曲を選んでくれたらいいから”と言われて、そこから徐々にもう一度自身の音楽と向き合うようになっていったんです」