人間関係のトラブルでアルバイトが続かない

初めてのアルバイトはスポーツクラブの清掃。新聞の折り込みチラシで見つけた。

「何もできないと思っていたので、自分にもできることがあったと、うれしくはありました。ようやくフリーターへの一歩が踏み出せたなと」

1、2年後に1人暮らしを始めた。兄に「そろそろ別で暮らそう」と言われたのだが、自分の稼ぎだけでは足りず親に家賃を半分払ってもらった。その後もファストフード、カラオケなどいろいろなアルバイトをしたが、どこも人間関係のトラブルが原因で続かない――。

「普通に働けることに、ちょっとずつ自信を重ねていくと、子どもらしく調子に乗ってしまうんです。例えば、『俺はできるけど、君はこれできないんだ』とか、言葉の節々から棘が出てしまう。ウソを交えて誇張する癖も抜けない。

自分は学もなければ、人付き合いの経験もない。コンプレックスの塊だったので、自分のほうができているぞと言いたくなっちゃう。自己防衛の一種なんですけど」

データ入力のバイトをしているとき、ある社員からこう言われた。

「例えで出してるけど、これ、君のことだと気づいてないよね」

そのときは真意がわからなかった。だが、自分がよく思われていないということは感じて、その職場も辞めた。

「いつもそうなんです。自分が招いてることなんですけど、段々と居心地が悪くなって。後になって『ああ、あれは自分に対して言ってたのか』と気付く。それが積み重なって苦手が増えていって、どんどん追い詰められていっている自覚はありました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
写真はイメージです(写真/Shutterstock)

外の世界で生きられないと絶望して再びひきこもる

26歳で実家に戻った。最後のほうはまともに働けず、生活費を全部親に負担してもらっていたので、「戻って来い」と言われたのだ。

「もう自分は外の世界で生きていけないと絶望して……。現実を忘れたくて、没頭できるゲームをひたすらやっていました。ゲーム依存に近い。親のお酒と一緒かもしれないですね」

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2度目のひきこもりは7年に及んだ。33歳で脱した理由を聞くと、少し考えて、「単純に時間がダメージを和らげてくれた気がします」と答える。

「両親は相変わらず飲んだくれで、実家の状況が最悪っていうのは変わらなくて。自分の3畳の部屋は襖で仕切られているだけなので、酔った母親が愚痴を聞いて欲しくて勝手に開けてくるのも、ホントに嫌で。だから、実家から出たい欲はあるんです。それが勝ったってだけの話ですね」

今度はやり方を変えて、自助団体に頼ることにしたが、そこでも苦難の日々が待っていた――。

〈後編へつづく『人生の半分、3度もひきこもった46歳男性がようやく“生きていていい”と思えた瞬間』〉

取材・文/萩原絹代