バフェットの「見事すぎる」投資判断

現在の熱狂の外側で、まったく別の景色を見ていた男がいる。ウォーレン・バフェットである。

バフェットが日本で買ったのは、AI銘柄ではなかった。派手な新興企業でもなかった。彼が静かに、しかし徹底して買い進めたのは、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅という、日本を代表する総合商社だった。

ウォーレン・バフェット氏
ウォーレン・バフェット氏
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そしてさらに、東京海上ホールディングスへの投資と戦略提携に踏み込んだ。いま振り返ると、この判断は実に見事だった。まるで、これから世界がどういう時代に入るのかを、先回りして見ていたかのようである。

総合商社とは何か。古い言葉で言えば、「ラーメンからミサイルまで」と揶揄された存在である。

資源、食料、エネルギー、鉱物、化学品、物流、発電、インフラ、金融、保険、事業投資。あまりにも事業領域が広いため、かつては「何をやっている会社か分かりにくい」と言われた。

だが、いまの時代においては、その“分かりにくさ”こそが強さになっている。世界が平和で、物流が安定し、資源が安く、通貨が安定している時代には、商社は地味に見える。

しかし、世界が分断され、戦争が起き、資源が奪い合いになり、物流が詰まり、為替が荒れる時代になると、商社は一気に国家インフラそのものに見えてくる。バフェットが見ていたのは、おそらくそこだ。

いま日本では、政府が「備蓄は十分にある」と言う一方で、現場ではナフサ、重油、軽油、建材、塗料、シンナー、断熱材、住宅設備などで値上げ、納期遅延、受注制限、出荷停止が広がっている。

ナフサは単なる石油製品ではない。包装材、フィルム、接着剤、樹脂、塗料、断熱材、プラスチック、医療用品、家電部材に至るまで、日本の製造業全体の血液のようなものだ。