特定の社員に飲み会を知らせなかったらまずいですか?

お嬢様 私のセレブ社長のお友達が、この前パーティーを開いたらしいんだけど、一部の社員を誘わなかったみたいなのよ。そしたら、その人たちにパワハラって訴えられたらしいわ。

松井弁護士 それは大変だったね。そのパーティーに僕も行きたかったけど、同じ会社にいて誘われなかったら、たしかにショックかもね。

お嬢様 でも、毎回全員を呼んでシャンパンをご馳走していたら、さすがにセレブ社長も大変よね。

松井弁護士 毎回シャンパンとはさすがセレブ社長だけど、本当にパーティーに誘わない行為がパワハラにあたってしまうのか解説するね。

パワハラの定義は、一つ前の質問で書いたとおり、業務上必要かつ相当な範囲を超えた行為になる。

飲み会は業務とは直接関係がなく職場の就業環境とは別物なので、特定の人を誘わないというだけで、すぐにパワハラになるわけではない。

しかし、飲み会が実質上、会社のための決起集会であったり、飲み会に来た社員が優遇されたりといったことになれば、少し状況は変わってくるよね。

それ以上に、たとえば、特定の社員を意図的に排除して、孤立させたり、人間関係に悪影響を及ぼしたりした場合は、「人間関係からの切り離し」というパワハラの類型にあたる可能性がある。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
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もちろん毎回飲み会に全員を誘う必要はないけど、特定の社員を排除するようなことがないようにできるだけ気を付けてほしい。

まとめ 飲み会の性質や、意図的な排除かどうかで異なる

要点1 飲み会に誘わないこと自体は、ハラスメントとは限らない
要点2 飲み会に出られないことが仕事に不利になるような状況だと問題
要点3 意図的に特定の社員を呼ばないのはパワハラの「人間関係からの切り離し」にあたる可能性がある

文/松井浩一郎・アトム法律事務所

松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
松井浩一郎、アトム法律事務所
松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
2025/11/4
1870 円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4396618520
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