「ありがとう、ごめんね」が口癖に

青木さんが再び動けるようになった裏には、家族の支えもある。

実は、1度目のオーバードーズをして退院した後、青木さんは当時、高校生だった息子の部屋で寝るようになった。それまで妻は娘と同室を使い、青木さんは1人で寝ていたのだが、夫を1人にすると危ないと思った妻が息子を説得。

それ以来、ずっと息子と一緒に寝起きしているのだという。青木さんがひきこもっていた間も、「部屋を出て行って」とは言われなかったそうだ。

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驚いて、「もともとお父さん子だったのか」と聞くと、むしろ逆だったと打ち明ける。

「子どもたちがちっちゃいころは、ずいぶんと僕、声を荒げて怒鳴ったり、手を上げたりもしてた。その後も、2回オーバードーズをしているんで、そこで家族を捨てるようなことをしているわけですよ。家内にも、ほんとに、いつ離婚されてもおかしくなかった。

それなのに、どうしようもない僕を見捨てずに、みんなずっと一緒にいてくれて……。本当に頭が上がらないです」

青木さんが心がけているのは、感謝と謝罪の言葉を口に出すことだ。

「子どもたちと話すときも、何か頼むときは『悪いけど何々してくれる? ありがとう、ごめんね』と、ずっと言っています。家内と話すときも、『うんうん、ありがとう、ごめんね』って。もう口癖になっていますね(笑)」

今も体調の波はあるが、以前のようにドーンと崩れることはない。近く家族みんなで旅行に行く予定があり、楽しみにしていると穏やかに笑う。

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取材・文/萩原絹代