〈前編〉 

家事をすべてやっていた母が認知症に

西沢敦司さん(62=仮名)は、30歳のころ郵便局の仕事を退職。その後は通院以外、ほぼ家にひきこもる生活を20数年続けていた。楽しみは、ときどき両親と外出することだった。

西沢さんが上野動物園でゴリラが見たいと言い、母と2人で出かけたときのこと。電車で上野駅に向かっていると、母が「どこで降りるかわからない」と言って急に泣き始めた。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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西沢さんは「僕が一緒だから大丈夫だよ」となぐさめて、上野駅で下車。歩き出すと再び「ここがどこだかわからない」と言って泣きじゃくる。動物を見ていると、ようやく泣き止んだ。

実はその前から、母には物忘れなどの症状が出始めていた。母が膝の痛みを訴えて手術し3か月入院したときに気が付いたそうだ。上野から戻った後、検査を受けると母は認知症だとわかった。

「すごく複雑でしたね。僕が迷惑をかけたから、母はそういう病気になっちゃったのかななんて、思ったりして……」

母に手を上げたと疑われ、警察に連れて行かれたこともある。

「母がなんか、わからないことを言い出したりすることに、僕がちょっと荒れちゃったのかな。自分の記憶では、手を振り上げただけで殴ったりはしていないのですが、誰かが警察を呼んでいて、気付いたときにはパトカーの後ろの座席に座っていました。唖然としました。警察で調書を取られ、1時間くらい説教されて釈放されましたが、母が怖がるからと駅前のビジネスホテルに泊まって翌日家に帰りました」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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