「ラーメンは、もっと自由でいい」
コース仕立てのラーメンの誕生

「いやいや、驚きましたって言われますけど……実は、1年半くらい前から決めてはいたんです」

穏やかな口調でそう切り出した渡邊さん。34歳、開業から丸5年。数々の賞賛を受け、全国からお客さんが訪れる人気店へと成長した。それでも彼の中では、次のステージへの構想が静かに熟していた。

「そもそも、独立する前から思っていたんですよ。いつかは料理をもっとちゃんと勉強したい、いろんな調理技術を身につけたいって。ラーメンに限らず、です」(渡邊さん、以下同)

「Ramen FeeL」店主・渡邊大介さん
「Ramen FeeL」店主・渡邊大介さん
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渡邊さんは神奈川・湯河原の名店「飯田商店」で修業を積んだ。ラーメン界の頂点ともいえる環境で身につけた基準は、彼にとっての“スタンダード”になったという。

「僕にとっての基準は『飯田商店』なんです。その状態で業界を見ると、やっぱり思うことがある」

独立後、青梅のイタリアンでアルバイトをした経験が大きかった。そこで目にしたのは、皿やカトラリーを温める所作、肉を最高の状態で提供するための火入れ、複数の料理を同時進行で仕上げる高度なオペレーション。

「ラーメンは効率のいいオペレーションで作る料理です。でもレストランは違う。言い訳のない状態で出すための仕事量がとんでもない。ああ、まだ自分は知らないことだらけだなって思ったんです」

ラーメン一杯に全てを詰め込もうとすると、食材のポテンシャルを十分に発揮できない場面もある。生産者が最も喜ぶ形で提供するには、構造そのものを変える必要があるのではないか――。

その問いから、コース仕立てのラーメンという試みが生まれた。焼き鳥職人と組み、鶏出汁のかけそばに最高の状態で焼き上げたもも肉を添える。お店限定で提供した時のその体験を「最高に幸せだった」と振り返る。

「コースにした瞬間にそのラーメンは“一杯いくら”の話じゃなくなるんですよ。全体で食体験を設計できる。ラーメンって、もっと自由でいいはずなんです」

彼の視線は、いわゆる“ファインダイニング”の領域に向いている。ミシュラン級のレストランが持つ洗練度を、ラーメンというフィルターを通して表現できないか。

「ラーメンはまだまだ次のレベルに行けると思うんです。今までアメーバみたいにうごめいてきた歴史の中にプツっと穴を開けて、真っ白な領域に行きたい」