「高市執行部は、首班指名選挙を乗り切ることで頭がいっぱい」

それでも高市氏は「(維新とは)基本政策がほぼ一致している」と語り、秋波を送る。高市氏に近しい自民党の中堅議員はこう嘆く。

「基本政策が一致しているとはとても思えません。“身を切る改革”を掲げ、構造改革路線を掲げる維新と、総裁選で“積極財政”を掲げた高市氏は、財政政策などの面で水と油だからです。

安易な連立は、中長期的には高市氏を追い詰めかねない。そもそも公明党でさえ閣僚ポストは1つだったわけで、複数ポストを差し出すこともありえない。維新では最近も離党者が出るなど、内部はガタガタしていると聞いている。

その意味では、物価対策で協力できるところはするが、維新との関係はあくまで閣外協力でとどめるべきです。連立のハードルは高くし、一段落ついたら解散総選挙に踏み切り、自民党単独で過半数を取り戻すのが筋でしょう」

仮に自維の連立が実現すれば、そのお膝元で維新と対峙してきた、自民党大阪府連をとりまく状況は大きく変わる。大阪府連の自民党元職はこう語る。

「高市執行部は、首班指名選挙を乗り切ることで頭がいっぱいという印象です。前のめりになるあまり、住民投票ですでに2度も否決された“大阪都構想”を利するようなかたちで“副首都構想”を呑み、禍根を残すことは避けるべきです。

今回の件を“大阪問題”と捉えているフシがありますが、維新は京都や兵庫など関西一円に影響力を持つ。選挙区調整は混迷をきわめ、関西の自民党がめちゃめちゃになる可能性がある。地元が奈良の高市さんならその辺はわかっていると信じたいが・・・・・・。

現状は地方組織ごとでは、まだ公明党とも連携する余地が残されていますが、公明党の小選挙区選出議員は大阪を地盤としているケースが多い。維新とタッグを組むことで、公明党の大阪の地盤を揺るがせば、自民党からのさらなる離反を招くリスクもあります」

多数派工作に邁進する高市氏は10月16日には、参政党の神谷宗幣代表(48)と会談し、「(参政党とは)政策が近い」と、首班指名選挙における自身への投票を呼びかけたという。

ただでさえ党内基盤が弱い高市氏。自民党の重要閣僚経験者は「先日の両院議員懇談会で公明離脱の責任が真正面から追及されなかったのは、組閣前だからというだけ。不満は水面下で高まっている」と語る。

総理の椅子をつかむための、なりふり構わぬ多数派工作。それは高市氏にとって吉と出るか、それとも――。

国会議事堂
国会議事堂
すべての画像を見る

取材・文/河野嘉誠 集英社オンライン編集部ニュース班