ゲン担ぎやルーティンはしない

ポジティブな思いも、扱いの難しいところがあります。たとえば「9回目のオリンピックに出る」という思いは、僕の潜在意識にインプットされていますが、それが気負いやプレッシャーとなって、邪魔をするときもあります。

だから運を引き寄せるためのゲン担ぎやルーティンも、僕はしません。ルーティンがうまくいかないと、自分の調子まで狂ってしまうのが嫌なので、無駄な情報は潜在意識に入れないようにしています。

ネガティブシンキングは、僕にはありません。ネガティブになりそうになっても、すぐに揉み消します。もう本当に、脳にストレスがかかるのが嫌なのだと思います。だから、ネガティブになりそうな場面や雰囲気になると、自分で意識的にポジティブに変換しているのではないかと思います。

いつもいろいろな人から「葛西さん、いつもポジティブだよね」と言われていますが、それは僕が、決してネガティブな思考や発言はしないように心がけているからです。ジャンプ選手が風を選べないように、人生では、思うようにならない出来事が多々起こります。

ですが、その出来事をポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは、自分で選ぶことができます。

ジャンプに不都合な追い風や横風に吹かれたとき、「ツイてない」と思うのは仕方がありません。しかしネガティブな感情は、そこで断ち切ることです。頭を切り替えて、2本目にはよい向かい風が来て、自分本来のジャンプができている姿を思い浮かべます。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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そうすることで、脳にストレスはかからず、クリアーな意識で次の場面を迎えることができるのです。

どのスポーツでも、もしかしたらビジネスでも同じかもしれませんが、勝ち負けを争うライバル同士に、実力的に大きな差はありません。勝敗を分けるのは、運とそのときのコンディションです。

ポジティブな言動を心がけることで、脳にストレスをかけず、よいコンディションで勝負に臨むことができます。

限界を外す レジェンドが教える「負けない心と体」の作り方
葛西 紀明
限界を外す レジェンドが教える「負けない心と体」の作り方
2025年9月17日発売
1,067円(税込)
新書判/224ページ
ISBN: 978-4-08-721379-9

50代に入っても国内大会で連続優勝し、世界の舞台に返り咲いたスキージャンパー葛西紀明。8度の五輪出場を果たし「レジェンド」と呼ばれる男は、ランニングをはじめとした練習法、習慣を工夫することで心技体を整え、現役選手として年齢の壁を超え続けている。
「負けたくない」気持ちを原動力に、妥協せず積み重ねた努力とは? 自らの限界を外してきた軌跡、そして年齢を重ねても成果を出し、挑戦し続けるための思考法、セルフマネジメントの極意を語る。

◆目次◆
第1章 限界を外すことで進化してきた
第2章 どん底からの復活
第3章 限界を超すメンタルをつくる
第4章 限界を外す体のつくり方

◆主な内容◆
●4年ぶりの復活
●51歳で見直した減量とランニング
●ランニングは一石三鳥のトレーニング
●限界は少しずつ外す
●50歳を超えても進化している理由
●「負けたくない」という気持ちが原動力
●コントロールできるのは自分だけ
●三日坊主にならないために
●コンフォートゾーンを超える
●若い選手から刺激をもらう
●20年かけて完成したジャンプ
●逆境こそがチャンス
●53歳の練習メニュー

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