「日本全国花見休日の巻」(ジャンプ・コミックス第169巻収録)
今回は、不景気の煽りを喰らって警察署の花見が中止されたことに異を唱えた両さんが、日本中を巻き込んだ民衆運動を率いるお話をお届けする。
署長や警察組織への不満が爆発した両さんは、マスコミを使って花見の中止撤回要求を世間に訴える。労働者団体に乗せられてますますテンションを上げた両さんは、やがて日本全国の労働者を相手に春闘の訴えを行う。
街頭でのアジテーションからやがてメディアを使っての拡散へ、そして勢いのある個人を利用しようとする団体がいつの間にかくっついて……と、世間での騒動拡大の図式をまんまシミュレートしているのに注目したい。本作が「週刊少年ジャンプ」に掲載されたのは2009年だが、もし近年に描かれていたら、両さんはSNSを活用していたのではないか。
両さんが演説の中で唱える「ええじゃないか!」について簡単に述べておこう。
これは、江戸時代末期の慶応3年(1867年)に、日本の複数の地域で同時に発生した騒動をもとにしている。これは、幕末の世に漂う閉塞感や苦しい生活などにより、民衆の間に生じた不満が爆発。彼らは世直しを訴えて口々に「ええじゃないか」と叫びながら踊り、集団で練り歩くという運動だ。
なお運動が倒幕派によって仕組まれたものという説もあり、もし事実なら、まさに「大衆扇動」「印象操作」の一例ということになる。
ちなみに、運動に勝利した両さんは、南極に転勤させられる。
かなり露骨な報復人事だが、両さんは本作以外でもたびたび南極に行った経歴を持つ。
「遊ボートの巻」(ジャンプ・コミックス第30収録)では、潜水艦で鬼ごっことしていて迷い込み、「絵崎教授80時間世界の旅の巻」(ジャンプ・コミックス第91収録)では、南極ツアーに参加中の絵崎の娘を訪ねた。
「両さんの春スキー!?の巻」(ジャンプ・コミックス第136収録)では、雪おろしのバイトで積雪の偽装がバレてお仕置きのため南極に飛ばされ、「ペンギン大行進の巻」(ジャンプ・コミックス第183収録)では、コウテイペンギンを捕まえて売り捌こうと南極入りしている。
とはいえ、極寒の地のろくな防寒設備もない派出所で、勤務どころか生存が可能なのだろうか?
それでは次のページから、両さんが大衆の支持を受け、日本列島に一大センセーションを巻き起こすお話をお楽しみください!!



















