51歳で見直した減量とランニング

世界の舞台に復活するために、大きく見直したのは減量とランニングへの取り組み方です。スキージャンプでは、「体重が1キロ増えると、飛距離を2メートル損する」と言われています。シーズン中の僕のベストの体重は59.2キロ。身長が176センチ、体脂肪率は約5.8%です。

僕の場合、40代までは、大会前に「3日間の断食」をすることで体重を落としていました。断食に欠かせないのがブラックコーヒー。カロリーゼロですし、水やお茶と違って、コーヒーを飲むと僕の場合はおなかも鳴らないので、減量には最適な飲み物なのです。

写真はイメージです 写真/Shutterstock
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ところが50歳で断食をしたところ、痛くて歩けないくらいの筋肉痛が起こりました。特に変なトレーニングをしたわけでもないので、痛みの原因は他に見当たりません。これはまずいと思い、断食をやめて、食事の量を減らして朝晩走り、1ヶ月かけて減量する方法に切り替えました。

40代、50代ともなると基礎代謝が低下するので、食事を減らして運動をしても、なかなか体重は落ちなくなります。ですから食事の量は減らしつつも、しっかり食べて、1ヶ月単位での減量をめざす。

僕の場合は、ランニングをするときにスマホのアプリを使って、走った距離を記録しています。世界の舞台への復帰を決意した51歳からは、1ヶ月に80〜100キロを走ることで、無理なく目標体重まで減量できるようになりました。

体重のチェックには、体脂肪率から体や骨の水分率まで測れるタニタの家庭用体組成計を使っています。1日に20回以上、体重計に乗り、また僕の場合、脇腹の肉をつかむことで大体の体脂肪率がわかるので、データと感覚の両方を使って、体重管理をしています。

復活に懸けていた2024年は、1月の1ヶ月間で150キロの雪道を走り、1日のエネルギー摂取量を1500キロカロリーに抑えて、1ヶ月で5キロの減量に成功しました。全体の練習量としては、30代までと比べると5分の1ほどに減っていますが、50代になってから、ランニングの時間と距離は、近年の2、3倍に増やしています。

51歳になって、減量とランニングの方法を見直すことにより、心身のコンディションが整い、以前のように「心技体」が一致するようになってきました。2024年のTVh杯での優勝も、4シーズンぶりにワールドカップに出場できたのも、カロリー制限とランニングを組み合わせた、コンディションづくりのおかげだと思っています。