ジャンルがわからない謎のドラマ
「これは一体、何を見せられているんだろう」
第2話を見終えた多くの視聴者が、そう感じたに違いない。『しあわせな結婚』は“ジャンルがわからないドラマだ。公式では「夫婦の愛を問うマリッジ・サスペンス」と銘打っているから、一応はサスペンスがメインなのだろう。
しかし、その合間に挟まれるのはラブストーリー、不気味な家族のホラー、そしてシュールなコメディ。視聴者は笑っていいのか、怖がるべきなのか、泣くべきなのか、まったく判断がつかない。その“混乱”こそが、このドラマの最大の魅力なのだ。
主演は阿部サダヲと松たか子。もうこの時点で「まともなドラマ」は保証されていない。視聴者も「これはフツウのドラマじゃない」と身構えていたはずだし、実際その通り。でも、“想定通り”に“想定外”が来る。
裏切られたくて構えていて、期待通りに裏切られる。視聴者の「こういうのが見たい(けど言語化できない)」という期待を、見事に提供してくれる不思議な作品だ。
第2話では、阿部サダヲ演じる弁護士・幸太郎が、新婚の妻・ネルラ(松たか子)に殺人容疑がかかっているという衝撃の事実を知らされる。視聴者は「ここから緊迫のサスペンスが始まる」と身構えるのだが、次に描かれるのは、なぜかワイドショーの“代打MC騒動”。そして、まさかのノリノリで達者に番組を仕切りはじめる幸太郎の姿である。
本来なら妻の過去に怯えて夜も眠れないはずの男が、スタジオではテンション高くニュースを読み、場を回す。現実離れしていて笑ってしまうが、実はこれこそ“リアル”なのかもしれない。
その後描かれる、ネルラの実家・鈴木家での夕食会もまた、ホラーとファミリーコメディを行き来する奇妙なシーンだ。登場する家族はみな一癖あり、それぞれが15年前の事件をどう捉え、どう動こうとしているのか、少しずつ明かされていく。しかしその“わかりそうでわからない”もどかしさが、また一層不気味で興味を引く。