Aが両親から受けていた「虐待」の数々

「すごく自分が汚いもののように思えてきた」

2月5日、横浜地裁で行なわれた被告人質問で、そう語ったのは事件当時15歳の少年A。昨年2月に神奈川県相模原市の自宅で50代の両親を殺害したとして、長男のAが殺人と窃盗の罪に問われた事件。

「父親が出社してこないことを不審に思った会社の上司が警察に連絡したことで、事件が発覚。調べに対し、Aは『殺そうと思って殺したことに間違いありません』と父親の殺害を認めたことで、逮捕に至った。

Aは未成年だったため、逮捕後は一度、横浜家庭裁判所に送られたが、『刑事処分の対象とするのが相当』として逆送。昨年5月に起訴されていた」(社会部記者)

一家が住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
一家が住んでいたマンション(撮影/集英社オンライン)
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殺害の理由に焦点が当たる中、5日に行われた約4時間にわたる被告人質問で明かされたのは、Aの驚くべき養育環境だった。

「Aは小学生の頃から両親からの暴言、暴力にさらされており、ほとんどの家事をさせられるなど、ネグレクトの状態に置かれていたと語りました。

さらに、Aは両親に目の前で性行為する様子を見せられたことがあると証言。父親がAに『お前もこうやってできたんだよ』などと言い、さらにAの頭を母の股間に押し付けたとも語った。Aはその時のことを『すごく自分が汚いもののように思えてきた』と振り返っていた」(前出の記者)

ほかにも両親との生活について、「殴られたり、酒や水をぶっかけられたりした」「小学生のとき日常的に『下僕』、名前の頭に『バカ』を付けて呼ばれたり、根暗などと言われた」と主張していたという。

Aの証言からは“異様な家族”の姿が浮かび上がるが、周囲の目にはAと家族はどう映っていたのだろうか。

小学生時代をよく知る同級生は、「彼は小学生のころから控えめというか、とにかくおとなしい子でした」と話す。

「大河ドラマが好きだったようで、同級生に歴史の話をしていましたよ。特に戦国時代の話が好きで、武田信玄とか織田信長とか武将の名前を出していましたね。

たしか小学校の頃はサッカークラブにも所属していたけど、中学のサッカー部は厳しくて有名だったので、『比較的ゆるい』と言われていたバドミントン部に入部した」

卒業アルバムでピースサインをするA(同級生提供)
卒業アルバムでピースサインをするA(同級生提供)

小学校時代はサッカーの試合や練習に、親子三人そろって姿を見せることもあったという。

「お父さんもお母さんも地味な感じで、地域では付き合いが広いほうではなく、本人もサッカーが上手だとか熱心だったという感じではなかったんです。ちょっと内気な彼の背中を両親が押していたという感じでした」(別の同級生の母親)

中学に進学すると、成績が優秀なことで知られるようになった。

「陰キャだけど頭がむちゃくちゃいいことで評判だった。Aの身内に超高学歴の人がいるといううわさがあって、親が勉強させることに関心が高いんだろうと思っていた」(前出・同級生)