「ポルシェ一代男の巻」(ジャンプ・コミックス第36巻収録)
今回は、半生のすべてを賭けてドイツの高級車、ポルシェ911を購入した男のお話をお届けする。
ポルシェ911は、ドイツの自動車メーカー・ポルシェが1964年から製造・販売している車だ。60年以上にわたって基本コンセプトや車種名、外観を大きく変えずに第一級の性能を保ち続けている、世界でも唯一といってよい量産車だ。
古典的な車体スタイルであるファストバック(屋根から車両後部にかけて単一の傾斜を持つ形状)のボディに、大型の丸いふたつのヘッドライト。さらには、日本のスバル以外ではほとんど使われていない水平対向エンジンを古典的なリアマウントで搭載している。
そんなポルシェ911シリーズは、スーパーカーというよりも、高性能グランツーリスモ(長距離を高速かつ安定して走破するのに適した車種)といった趣がある。
本作で登場する山田は、子供の頃に憧れたポルシェ911を手に入れるために生きてきた男。そんな彼が、念願の車とともに歩みはじめた“当たらない”日々で、異常なまでの車への情熱が炸裂し……!?
ちなみに本作中では、中川もポルシェに乗っているが、『こち亀』きってのポルシェ乗りといえば、麗子だ。
ゲンバラ、ブッフマン、ケーニッヒといったドイツの自動車チューンメーカーがいじり倒して超高性能化したポルシェの数々を、中川をビビらせるほどの猛スピードでかっ飛ばすのだ。
念のため申し上げておくが、日本には、ドイツと違ってアウトバーン(ドイツ・オーストリア・スイスを結ぶ速度無制限地域が存在する高速道路)などはない……。
最後に、庶民ながらスーパーカーを愛しすぎた男を描いた、本作と並ぶ傑作をご紹介しておこう。「我が夢フェラーリの巻」(ジャンプ・コミックス第52巻収録)の主人公は、フェラーリを愛するあまり、家族ともどもテスタロッサ(車内は2シーターで極めて狭い)の中で生活する男、山田。作中では名乗ってはいないが、オチのコマに描かれた表札に「YAMADA」と刻まれていた。スーパーカーに魅入られたふたりの庶民がそろって「山田」姓なのには、なんとも奇妙な縁を感じてしまう。
それでは次のページから、ポルシェを愛しすぎた男をめぐる大騒動をお楽しみください!!