人件費を上げることなど到底できなくなる
特に中小企業や飲食関連は原材料やエネルギーコストの上昇がダイレクトに響き、価格転嫁が難しく収益が圧迫されている。更に価格転嫁ができずに収益を圧迫するから人件費も上げることができない。
激しい物価高の中でも無い袖は振れないので人件費を上げることなど到底できなくなる。そうなれば、悪循環で慢性的な人手不足となる。特に人手不足については飲食などのサービス業や運輸業で深刻化しており、業務の効率化が進まず、倒産リスクが高まっているのだ。
このほか、コロナ支援で実施された実質無利子・無担保の融資のいわゆる「ゼロゼロ融資」返済負担により資金繰りが悪化していることもあげられるが、原因はもはや「コロナ」ではなく「円安放置」なのだということは誰もがわかっているはずだ。
そもそも現在の慢性的な円安状態の原因は「日米金利差」によるところに尽きる。昨年、日銀は金融政策転換したが、昨年7月の決定会合で何の前触れもなく8年2カ月ぶりに政策金利を0.25%に引き上げたことで一気にキャリートレードの巻き戻しによる円買いが進み、株価が1日で4451円も急落して「令和のブラックマンデー」と呼ばれた事案がトラウマになっているのではないか。
日銀総裁も委員を務めるメンバーも名誉職に近い学者先生
だいたい日銀が金融政策の指針や方針を前もって周知しておけば、そうした大きな混乱は起きなかったはずだ。しかし、日銀総裁も委員を務めるメンバーも名誉職に近い学者先生が多く占めているので、今さら大きなリスクなどとりたがらない。
誰も責任を取りたくないものだから、「どっちつかず」で「あやふや」のまま多数決で決めたことが招いた悲惨な結果だと思う。それに彼らは勝ち組2割サイドから日本経済や景気を見ているから日本の深刻な不況などわかるはずもない。
だからトランプ政権の不確実性を理由に今年の1月の決定会合で0.25%から0.5%に引き上げたのを最後に全くの知らん顔を決め込んでいる。もう、4ヶ月以上も見て見ぬふりをしているのだ。
その間にも円安放置によって息絶えていく倒産企業はどんどん増加している。日銀が政策金利利上げを見送る度に一時的に1ドル=2~3円の円安に傾く。その後、1ヶ月ほどで元値にもどるものの、決定会合が終わると再び2~3円の円安に傾くということを繰り返している。