子育てする余裕もなく、少子化はどんどん進む 

だから何も解決しないどころか、格差がどんどん広がり、家計は容赦のない物価高に晒されている。

実際に2023年 国民生活基礎調査によると年収300万円未満の給与所得者は全体の約36%も占めている。つまり、約3割の世帯は厳しい物価高に晒され、「働けど働けど我が暮らし楽にならざり、ぢっと手を見る」という石川啄木の短歌のような労働の報われなさと貧困の現実に直面している生活苦状態なのだ。無論、このような状況下では子育てする余裕もなく、少子化はどんどん進む。

さらにこういう層が増えれば増えるほど、時代は荒んでいき、闇バイトや強盗、詐欺など犯罪は激増し治安は確実に悪化していく。

物価についても歴史的に円安が進んだ2023年にはバブル経済崩壊以降で最多の食品が32396品目も値上げされ、平均の値上げ率も15%となった。2024年も引き続き12520品目が値上げされ、平均値上げ率は17%となった。

2025年に入っても1~4月までで既に6121品目が値上げされ、確実に昨年を上回るペースとなっている。平均値上げ率も18%となり、年々、値上げ率が上昇しているのも気になる。

海外旅行に行けない日本人

ついに始まった地獄の倒産連鎖…名物投資家が警鐘「勝ち組2割」「負け組8割」にくっきり分かれた日本 _3
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こう考えれば、円安是正にも「利上げ」がもっとも直接的かつ強力な解消策だということは誰でもわかる。

日本はほんの2割のバブル経済さながらの勝ち組のために「円安」放置を容認し続けた結果、「円安」がいつのまにか「円弱」を招き、国際競争力を低下させてしまった。今や日本の不動産、株式をはじめとして、ありとあらゆるものが「ディスカウント」の安売り国となってしまったばかりか、日本人そのものが確実に貧しくなってしまった。

現在、パスポートを所持している日本人は17%に過ぎない。裏を返せば、83%の人には海外旅行に行くなど無理だ、もしくは無用だということだ。

20年ほど前に仕事の関係でインドネシアやタイ、ベトナム、中国などを訪れていたが、あの頃は日本人海外旅行者が実に多かった。皆がハワイなど世界中を旅してハイブランド品を買い漁っていた。それだけ、円が高かったせいもあって多くの日本人が豊かであったと言える。

外圧でしか動けない日本の中央銀行は情けない 

そして東南アジアやアジアの国に滞在するたびに日本の豊かさと、それらの国の貧しさと格差を実感していた。しかし、今ではインバウンドとして東南アジアの彼らが日本を訪れ、安売り日本の様々なものを爆買いして帰国していく。ある意味ではあの当時の東南アジアにまで日本は成り下がってしまったのかもしれない。

さて、問題言動連発のトランプ大統領だが、就任以来、一貫してFRBに対し利下げをするようにプレッシャーをかけている。一見、滅茶苦茶なようにも思えるが、減税も相互関税も一応は公約を果たし、相互関税の悪影響が出る前に各国とのディールを進めて、減税は実現するなど巧妙な一面はうかがえる。

トランプ大統領の大きな支持層には農業従事者が多く、日本に米国製のコーンや大豆などの穀類、牛肉、さらには米国製の自動車や武器、兵器を沢山買ってもらうためにも貿易交渉で最終的には円高にするような外圧をかけてくるのは必至だろうと思う。

現状は相互関税発動など不確実性要因でFRBが利下げを見送っているために、事なかれ主義の日銀もこれ幸いに同調している。やがて、外圧によって日銀は金利を上げ始めて段階的に2%程度にまではもっていくとおもうが、外圧でしか動けない日本の中央銀行は情けないとしか言いようがない。忍耐強く我慢を続けている8割の一般庶民が1日も早く報われることを願うばかりだ。

文/木戸次郎