不祥事をバネに立ち直る企業も多いが… 

日本郵便が起こした不祥事は、全特にとって都合がよかったようにも見える。

今年6月の株主総会で日本郵政トップの首がすげ替わることになったからだ。総会では、増田寛也氏がトップを退任し、後任として日本郵便の根岸一行常務執行役員が就任する予定。

根岸氏は1994年に旧郵政省に入省した元郵政官僚。全特のような特殊な組織を知り尽くしているだろう。増田氏は郵便局の統廃合に言及し、全特から猛反発を食らった過去がある。元郵政官僚の根岸氏が大胆な経営改革に着手するとは考えづらい。しかも、右腕となる日本郵便の社長も元郵政官僚の小池信也氏の就任が予定されているのだ。

ことなかれ主義の官業回帰が見え隠れする。

巨大企業が不祥事を機に生まれ変わることは珍しくない。期限切れ鶏肉偽装が発覚した「マクドナルド」や、集団食中毒が発生した「雪印」がそうだった。逆境をバネに今では強いブランドに生まれ変わっている。

日本郵政は民営化を果たしたにもかかわらず、信頼回復の途上で与党から支援策が打ち出されるという不可思議な企業だ。郵便局のネットワークを維持することの是非を、真剣に議論する時期が訪れているように見える。 

取材・文/不破聡   写真/shutterstock