輸送費と人件費の高騰が米価格を押し上げた?
農林水産省が5月16日に公表した政府備蓄米の流通実績は衝撃的な内容だった。
今年3月17日〜4月13日に流通した備蓄米はJAなどの集荷業者から卸売業者に販売する過程で、「60kgあたり7593円」の経費・利益が乗せられていたという。2022年産の米のコスト調査結果では2206〜4689円だったため、経費と利益は1.6~3.4倍になっていたことが明らかになったのだ。
これに対して、輸送費や人件費高騰の影響を受けたという専門家の意見も聞こえてくる。しかし、とある米の卸売業者の2024年度における運賃荷役料と給料及び手当は46億円で、2022年度が39億円だ。米の販売数量は2024年度が36万トン、2022年度が38万トンだった。
単純計算で2024年度は1トンあたり1.3億円の輸送費、人件費がかかっていた計算で、2022年度は1億円である。専門家が指摘するように、輸送費や人件費高騰で経費が3.4倍になるほど膨らむとは考えづらい。
結局のところ、卸売業者が十分な利益を出すために、備蓄米の価格を上げていたと見られてもしかたがないのではないか。
米の流通に疑問の声を上げる小売業者も現れた。「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)だ。小泉大臣に意見書を提出し、五次問屋まで存在する多層構造を批判。
中間コストやマージンが膨らみ、価格高騰の一因になっていると問題視したのだ。PPIHは、小売業者とJAなどの集荷業者が直接交渉するというシンプルな構造にすることで、コスト削減につながると提起している。
これに対し、小泉大臣は「米の流通に対して透明化しなければならない」とコメントしている。
実は小泉氏が食品流通の仕組みを問題視するのはこれが初めてではない。「農林水産業骨太方針策定プロジェクトチーム」の委員長を務めていた2016年、「生産者に有利な流通・加工構造の確立に向けて」という資料を提出している。
「国内で生産された9.2兆円に輸入品を加えた10.5兆円の農林水産物は、流通・加工の各段階でマージンとコストが付加され、最終的に約76兆円となって消費」されていると指摘したのだ。
同年9月14日に行なわれた会合では、米卸売業の不要論にも踏み込んでいる。