高齢者がトイレで「きばる」と…

歳を重ねると副交感神経の反射が弱くなり、腸の動きが悪くなります。そのため、便が腸に留まる時間が長くなって便が硬くなり、出にくくなります。

さらに本来であれば、便が直腸という器官に到達すると、直腸の神経が反応して大脳を刺激し便意を感じますが、これも感じにくくなります。加えて、排便するときに必要な腹筋や肛門の筋肉の働きが弱くなるため、便を押し出しにくくなります。

また生活習慣病によって、腸に向かう血管に動脈硬化症が生じると、余計に腸の動きが悪くなり、便秘になってしまいます。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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このような理由から、高齢者はトイレで長い時間「きばる」のです。

きばれば血圧は上昇し、脳血流が増加。これにより、動脈硬化の進行によって脳に形成されていた動脈瘤が破裂して、脳血管系疾患を起こすことがあります。

なお、脳血管系疾患を発症すると激しい頭痛に襲われますが、すぐに心臓停止や意識消失には至りません。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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頭痛に耐えながらトイレから這いずり出て、携帯電話で助けを呼ぼうとして倒れこむので、ご遺体の膝に擦りむき傷ができるわけです。

日常的に使用するトイレも、高齢者にとっては突然死しかねない場所であることを理解して、用を足すときには気をつけてほしいですね。

※このような危険を避けるには……
・食物繊維が含まれる食事など、便通がよくなる食生活を心がける。
・家族は高齢者が便秘になりやすいことを理解する。
・便通が悪い場合には医師に相談し、適切な処方を受ける。

文/高木徹也

『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)
高木 徹也
『こんなことで、死にたくなかった 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)
2025/3/27
1,760円(税込)
248ページ
ISBN: 978-4837940319

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