トランプ1.0と2.0の明確な相違点

トランプ政権一期目(トランプ1.0)と今回の二期目(トランプ2.0)には明確な相違点が認められるので、いくつか挙げておきたい。

一つ目。トランプ1.0のときはコロナ禍に見舞われたため、ワクチン開発に尽力した。「オペレーション・ワープ・スピード(OWS)」と称したとおり、猛スピードでワクチン開発を行って、世界中に供給し、その成果をおおいに喧伝した。

ところが、今回のトランプ2.0では、なんと反ワクチン派で知られるロバート・F・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官に起用した。

二つ目は、トランプ1.0では仮想通貨、あるいは暗号資産に対して、非常に懐疑的だった。トランプはビットコインを「これは通貨ではない。ただの詐欺だ。本当の通貨は米ドルだけだ」と取り合おうとしなかった。

しかし、トランプ2.0では態度を豹変させ、「米国を暗号資産の首都にする」とまで言い出した。暗号資産の株価はうなぎ登りとなった。

その背景には、イーロン・マスクやヴァンス副大統領の支持者でもある暗号資産コミュニティが、今回のトランプの選挙キャンペーンに多額の寄付を行ったことがある。公表数字では総額1億3100万ドル、日本円にしてざっと200億円。

トランプは選挙戦中、暗号資産に懐疑的なSEC(米証券取引委員会)のゲイリー・ゲンスラー委員長をクビにすると公言。これに対し、同委員長は本年2025年1月20日、大統領就任式当日に辞職した。

三つ目の違いは、動画アプリのTikTok(ティックトック)に対する対応である。トランプ1.0ではTikTokの使用を米国で禁止しようとしていた。当時は米中関係が悪化した時期だった。ところが、今回のトランプは「TikTokを救う」と選挙キャンペーン時から明言していた。

2024年、米国政府はTikTokの親会社、中国のバイトダンスが、TikTokをスピンアウトさせて売却しない限り、米国内でのサービスを禁止すると発表、裁判所も合憲の判断を下した。

しかし、大統領選に勝利したトランプは、「自分が若年層において大差で勝ったのは、TikTokの貢献度が大きかった」と語り、自身のSNSで「就任と同じにTikTokの停止を延期する大統領令を発令する」と表明。その言葉どおり、就任日には75日間の施行猶予を設ける大統領令に署名した。

しかしながら、特に共和党の上院議員で国務長官に就任したマルコ・ルビオは反中スタンスで知られるが、彼が「TikTokは中国のスパイウェアに他ならない」と言っていることから、予断を許さない。