日本円に戻らなくなった海外への投資

日本はこれから間違いなくインフレになっていく。それがはっきりと表れているのが不動産価格である。東京都の不動産価格は、もはや「パワーカップルなら買える」と言っていた価格レベルからも、はるかに上昇してしまった。それまで比較的なリーズナブルだった足立区でも7000万〜8000万円クラスが普通になってしまった。

東京都内の60平米の中古マンション価格は、平均年収の15倍程度まで膨らんでしまった。通常は年収の7倍と言われていたので、完全にバブルの領域に突入しているのが分かる。このバブル状況はもっと続くかもしれない。なぜなら、不動産バブルは弾はじけそうにないからである。

財務省も日銀も気づいていない世界的な“パラダイムシフト”…今後の高インフレ時代、日本人が資産を守るためにすべきこととは?_1
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なぜ1990年に日本の不動産バブルが弾けたかというと、それは政策金利にあたる公定歩合を6%に引き上げたからだった。そもそも論として、当時は政策金利を2%から6・5%に引き上げてしまったがゆえに、バブルが崩壊したわけだ。

日本はこの一年間で政策金利をマイナス0.1%から0.5%に戻した。この状況で日本の不動産バブルが収まるわけがない。また、日本の貿易収支の黒字が減じている今、微々たる利上げで円高になるわけがない。

今後どこかの時点で、為替のコントロールが失われるのではないかと、私は懸念している。

先述のエコノミスト藤巻氏が言っていたように、1ドル=500円になるかどうかは分からないけれど、どこかの時点では一日に10円とか20円下げる強烈な円安が起こる日がくるかもしれない。そうしたシーンが現実に訪れるとき、日本の通貨当局は〝パニック〟に陥ってしまうはずだ。

日本の通貨の管理を司る人たちは、これまで甚だしく調子に乗っていた。どんなにお金を刷っても、日本円は海外に膨大な資産を保有する世界一の債権国の通貨だから大丈夫だと思っていたのだろう。これが彼らの自信の〝裏付け〟であった。ただ、あまりにも短期間で円安を進めすぎてしまい、今度は海外で稼ぐ人たちの利益、つまり、海外で投資して得た利益が日本に戻らなくなってしまった。日本円に戻らなくなったのだ。

おまけに、もともと日本にいる人たちも、それに気づいてしまった。先述したように、日本発の〝キャピタルフライト(資本の国外逃避)〟が起きて1年以上が経過している。

いま日本では新NISAの影響もあって、毎月1兆円以上のキャピタルフライトが実際に起きている。つまり毎月1兆円の「円売りドル買い」が一般の日本人の手によって行われているのだ。年間で12兆円以上にものぼるという膨大なるキャピタルフライト。

いま円安が起きているから、円安が続くと怖いから、資産が目減りしないように外貨建てで、ドル建てでモノを買おう。日本人のこういう考えとアクションがさらに円安を加速させた。これは完全に悪循環に陥っている。

けれども、これは日本国民のせいにはできない。日本人は一人ひとりが自分の資産を守るべきだからだ。私は「為替リスクを背負う必要のない日本株も混ぜたほうがいい」とは言っている。少なくとも分散投資すべきだから。