障がい者が巻き込まれる性犯罪の実態
──具体的なカウンセリングの内容を教えてください。
まず身体障がいをお持ちの方は、どの範囲であれば身体が動くのか、逆にこちらでどれほどサポートする必要があるのか確認します。
そこから先ほど話した、具体的なプレイ内容について話していきます。それぞれの性癖を聞きつつ、可能な範囲で要望に応えています。
プレイ内容について口頭で伝わりづらい場合は、男女2人が抱き合っているイラストを見せて説明をすることもあります。
──障がい者の方々に性的サービスを施されてきたなか、どのような点に難しさを感じられますか?
障がいを持っていることに引け目を感じて、自己肯定感が低い方に対して、どう接していいかは常に葛藤しています。当事者の生育環境や辛い経験は人それぞれなので、カウンセリングやプレイ中の短時間で、利用者の心を解きほぐしていくのは簡単なことではありません。
当店では女性も対象とさせていただいてますが、性行為に応えられないことで自信を無くしたり、男性から嫌われてしまうんじゃないかと葛藤する女性は少なくありません。
実際に私自身が女性の相手をしたこともありますし、信頼できる女性用風俗店を紹介することもありますが、本番行為は禁止されているため、女性のセックスの願望を実現するのはハードルが高い課題も残っています。
──性風俗店とは別に、障がいと性に関するカウンセリングなども行なわれているとか。
はい。「輝き製作所」という一般社団法人を立ち上げ、カウンセリングや講演、性教育も行なっています。女性の悩みについては、そうした活動を通して寄せられた声が多いです。
啓蒙活動では、障がいの有無にかかわらず、一人の人間として性欲や性を享受する権利は平等にあるとお伝えしています。
一方で、障がいがあることで、望まない妊娠につながってしまったり、気づかぬうちに性被害に巻き込まれたりするケースもある。そうした注意喚起も行なっています。
──気づかぬうちに性被害に巻き込まれているケースとは?
知的障がいのある方に起こりがちな事例ですが、男性だとSNSや出会い系サイトを通じて知り合った業者に、先に金銭を要求されて詐取されてしまうケース。あとはアダルトサイトに高額課金してしまう事例は多いです。
女性の場合だと、裸の写真を送ってほしいと要求されて応じてしまい、その後に脅されて金銭を要求されてしまうパターン。あとは詳細な契約内容を知らされていないまま、アダルトビデオに出演させられてしまう事例です。
いずれにしても根底には、当事者が性を謳歌したいという気持ちや、性生活を充実させて満たされたい願望があると考えています。
だからこそ、障がい者の性を頭ごなしに否定するのではなく、周囲が障がいに理解を持ち、節度ある関わりを保ち続けることが重要だと感じています。
障がい者を少数派として見るのではなく、社会全体が配慮を持ち、性を楽しめる世のなかになるためには何が必要かを一度考えてみてもらいたい。我々の活動がそのきっかけになってくれれば幸いです。
【漫画】『障がい者専門風俗嬢のわたし(シリーズ立ち行かないわたしたち)』
【漫画】『障がい者専門風俗嬢のわたし(シリーズ立ち行かないわたしたち)』第6~8話を読む(漫画を読むをクリック)
取材・文/佐藤隼秀 写真/本人提供