渡部の突出したスイング能力
カウンタースイングの効用の一つが、上半身と下半身の捻転差を身につけやすいことだ。体のねじれによって大きな力を生み出せ、変化球に泳がされてもグッと我慢して対応しやすくなる。渡部が続ける。
「カウンタースイングの中で、上半身と下半身をバラすというのがあります。下半身が(前に)先に行っちゃっても、上半身は(後ろに)置いてきぼりというか、グリップを(後ろに残して)持った状態で打てるので。そういった面では泳がされても対応できると思います」
昨今、プロ野球のファームやアマチュア野球では選手育成において「言語化」の重要性をよく耳にするが、渡部はこの能力が極めて高い。例えば通称「カチカチバット」だが、渡部は「カチ」と鳴らすことを求めてスイングしてきたわけではないという。
「カウンタースイングにはいろんな効果があります。特に投球軌道に入っていくスイングなので、振り遅れてもライトに飛び、打率が残りやすい。捻転差を磨き、スイングも効率的に力を伝えることができると思います。
でも、使い方に正解があるわけじゃなくて。ただストレッチ代わりに振ることによって鍛えられるというか、強化できるというものです」
渡部の打撃は下半身で粘る強いスイングも特徴に挙げられる。それを可能にさせているのが自身も認める体の強さだ。
高校時代は練習量の多さからなかなか増量できず、体重75kg前後だったが、大阪商業大学に進んだ1年時の冬に食事とウエイトトレーニングを計画的に行い、85kgに増量。「打球も飛ぶようになった」と振り返る。
高校でスイング、大学で肉体に磨きを上げた一方、野球を始めた小学1年時から養ってきたのが選球眼だ。
「小学校から野球をずっとしてきて、大体は自分のストライクゾーンがあります。外は大体、ボール半分までわかりますね。プロに入ってもそこは変わりません。真っすぐを打ちにいった時に変化球を落とされたら振ってしまうこともあるけど、真っすぐや外のボールは見えています」
言い換えるとピッチャーの投じたボールが手元に来るまでの「空間認識力」に優れているのだ。
「オンプレーン率×空間認識力」が見事に発揮されたのが、4月29日の楽天戦だった。楽天の先発左腕・古謝樹に対し、初回1死二塁から初球は外角高めのストレートをファウルにした後、1ボール1ストライクからの3球目、内角スライダーをセンター前にタイムリー安打を放つと、「イメージ通りに打つことができてよかったです」と振り返った。