巨額投資で許されなくなったカジノ目標の未達
日本維新の会は万博のインフラ整備費用として、9.7兆円を国に要望した。
この計画は170事業で構成されており、そのうち92事業にかかる9.4兆円分の費用便益分析をすると28.8兆円のリターンに達する、というのが維新の会の言い分だ。もちろん明言はしていないが、年間1兆1400億円ものカジノによる経済波及効果がその中核にあるだろう。
インフラ整備計画では、道路の耐震対策や河川の強靭化など安心・安全な万博運営費に2.5兆円、道路や鉄道の整備など夢洲へのアクセス性の向上に7580億円、万博会場周辺の下水道整備などインフラ整備に810億円が投じられる。少なくとも、合計3.3兆円もの巨額費用が、万博とカジノのセットプランに直接かかっているに等しい。
カジノ施設運営の中核を担う大阪IR株式会社は、カジノリゾートの世界的な企業であるMGMとオリックスがそれぞれ40%を出資し、少数株主が20%という構成だ。日本政府が全額出資するJRAのような形態とは異なる完全な民間法人である。集客が不十分だったとしても、政府は「民間の自主性に任せる」などと突き放すこともできるわけだ。
しかし、夢洲開発に多額の税金を投じている以上、政府は人集めに尽力しなければならないだろう。今回の万博のようにしれっと目標を下方修正することは許されない事業だ。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock