35ドルを握り締め「一番華やかな場所へ行って!」

1958年8月16日、マドンナ・ルイーズ・ヴェロニカ・チッコーネは、ミシガン州デトロイト郊外で生まれた。父はイタリア移民一世の出身で、母はフランス系カナダ人だった。

幼少の頃は大家族の中で育ち、日曜日には家族そろって教会へ行くという、昔ながらの慎ましい暮らしぶりだった。しかし、そんな彼女を失意のどん底に突き落とす出来事が起きる。

マドンナのファーストアルバム『バーニング・アップ』のジャケット写真
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母親が乳癌で亡くなったのだ。大好きだった母親が、30歳という若さで病魔と闘いながら衰弱していく様を目の当たりにすることは、当時まだ5歳だった少女にはあまりにも衝撃的で、またこう思うようにもなった。

「母がいないなら、私は強くなる! 自分のことは自分でやる!」

そして1978年7月。19歳になったマドンナは、1年半しか通っていないミシガン大学を中退。「スターになる」という夢を実現するため、グレイハウンドバスでニューヨークへ旅立った。彼女にあるのは音楽やダンスへの情熱、そして着替えの入ったボストンバッグとわずか35ドルの現金だけ。

行くあてがあるわけでもなく、とりあえずタクシーに乗るとこう言った。

「一番華やかな場所へ行って!」