無料のスポットに行列が
外径約675メートル・幅約30メートルのスケールを誇る万博のシンボル「大屋根リング」は、日本の伝統建築に用いられる「貫(ぬき)」の技術を活かした巨大建造物だ。
会場をぐるりと取り囲むように建てられており、雨風や日差しを防ぐ役割を果たすとともに、会場内の主要な動線としても機能している。
4月中旬、昼間は汗ばむほどの陽気。リングを1周するにはおよそ30分かかるが、強い日差しの影響か、途中で引き返す人の姿も多く見られた。真夏には、このシンボルを歩く人が一人もいない――そんな光景も想像に難くない。
一方で、この大屋根リングの下にできた日陰スペースでは、たくさんの人がベンチに座って休憩していた。風通しもよく、近くには自販機も設置されているので休憩スポットとして人気のエリアだ。座っている男子高校生に話を聞いてみると、「まだ会場に着いたばかりですけど、ちょっと暑いから疲れてしまって」とのこと。
この日の最高気温は26℃。真夏に比べるとまだどうってことはないが、入場までに30分以上かかり、会場に着いた後もお目当てのパビリオンまで10分以上歩く上、さらにそこで列に並ぶとなると、確かに体力の消耗は激しい。
会場内では、公式グッズとして日傘やハンディファン、ネッククーラーなど暑さ対策のアイテムも販売されている。また、ダイキンが設置した「氷のクールスポット」といった休憩所や、会場中央の「いのちパーク」にあるミスト噴射エリアなど、熱中症予防を意識した設備もある。
この日はミスト噴射エリアに人が集まり、日光で火照った身体を冷やしながら子どもたちが遊んでいた。
また、水分補給という点で目を引いたのは、無料で利用できる給水所。会場内で全32か所設置されており、この日は給水所に水を補給するための列がいたるところでできていた。
この給水所では持参したペットボトルや水筒に水を補給できるため、熱中症対策はもちろん、プラスチックごみ削減への啓発という点でも一定の成果が上がっている。
しかしながら、ここで浮かび上がってくるのが行列問題だ。取材時は平日ということもあり、給水所の待ち時間は数分で済んだが、のどが渇きやすい夏本番の休日には長蛇の列になることが予想される。
大阪府の吉村洋文知事は21日の会見で、2005年に開催された愛知万博よりも給水スポットの数が3倍あるということ、また6月からはさらに増設する予定を明かしているので、行列の解消は今後に期待したいところだ。