「2年目以降スポーツ奨学生として申請予定、1年目のみお支払いください」
難波容疑者が逮捕される約2週間前――。取材班は東京都世田谷区の集合住宅にて難波謙二容疑者と接触した。難波容疑者はインターホン越しにこう話した。
「すみません。あのね、いまあの…。あの…。あの…裁判の最中なんで、すみませんけど。勘弁してください」
難波容疑者による一連の詐欺事件を「現役部員への裏切り行為」と非難するのは、日本大学重量挙げ部で去年まで部員として活動していた男性OBのA氏だ。彼は「同期や後輩、先輩といった周囲の人が被害に遭っていた」と明かす。
「元監督とコーチがグルになって、学生のスカウトをするときに、学費免除の会話の過程で詐欺をしていたのです。学費全額免除に値する高校生へ声がけをしているとき、始めはわざと半額免除と言っていたそうです。その話に乗った学生とその親御さんからは、本来全額免除のはずが、半額分の支払いを余儀なくされ、それを重量挙げ部の口座に振り込ませて横領し、私的理由で使用したと報告を受けています」
A氏ら重量挙げ部員が難波容疑者らの問題を耳にしたのは、24年7月の頃だったという。
「(24年の)5月初旬からこの問題は日本大学内で判明していたようですが、我々は東日本インカレが控えていた重要な時期でしたので、インカレ終了後に伝えられました」(A氏)
今回逮捕された難波容疑者は24年11月から、日本大学と民事裁判で係争中となっている。民事裁判の資料によれば、難波容疑者は日本大学から委託を受けているコーチ2人に指示し、少なくとも2014年から詐欺行為を働いていたという。