世界第二の化学肥料消費国のインドは国産化へ

化学肥料の国際価格が値上がりしたことで、食料安全保障の観点から国産化を進めたり、需要を満たすために増産したりする国が出てきた。

国産化に舵を切ったのがインドだ。同国は、中国に次ぐ世界第二の化学肥料消費国で、2022年時点で世界の肥料の16.1パーセントを使っていたが、輸入頼みを改め、自給率を高めようとしている。代表的な窒素肥料である尿素を増産すべく、大規模な工場を建設するなどして、ここ数年、肥料の輸入量を大きく減らしている。

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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リン酸に関して、ノルウェーで大規模な鉱床が発見されたとのニュースが2023年に世界を駆け巡った。今後50年の世界の需要を満たせるリン鉱石が埋蔵されていると報じられている。

ただし、経済的、技術的に果たして実際に採掘できるかどうか不明で、糠喜びはできない。肥料業界の関係者に聞いても、「眉唾」とか「期待薄」との冷めた見方が多い。

リン鉱石は、重金属のカドミウムを含んでいたり、放射能を帯びていたりすることが多い。採掘に適した品質でなければ、どれほど埋蔵量があっても用をなさない。リン酸の製造自体が環境負荷になるとして世界的に避けられる流れにある。このことも逆風となる。過剰な期待は禁物なのだ。

中国依存を脱する難しさ

世界各国がさまざまな対策を講じるなか、日本は何ができるのか。選択肢の一つに、肥料の調達先の多元化がある。これは、JA全農が長年掲げてきた課題でもある。

「多元化という意味では、ずっと取り組んではいるんですけども」と谷山さん(JA全農耕種資材部肥料原料課長の谷山英一郎さん)。

だが、リン安の輸入元は、米中とモロッコの三カ国で9割を占める。なかでも中国が7割と、依然として最も多い。

(写真/Shutterstock)
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他にも生産国はあるものの、日本のメーカーが要求する品質をクリアできる国は限られる。

「価格の面でも、やっぱり中国は近くて価格競争力があって品質もいいという、条件がそろっている。中国が輸出を再開すると商社が買い付け、我々も当然そこに対抗しないといけないので、ある程度買わざるを得ない。代替となりそうな地域がなかなか見つからないという状況です」(谷山さん)