どのような食品で発症するのか?
FPIESは元々、新生児・乳児期に多い病気と考えられ、原因の食材も年齢で変わってくる。
「原因となる食物は、新生児期は牛乳など乳製品が多く、乳児期以降は鶏卵、大豆、魚介類などが増えてくる傾向があります。大人の場合はエビなど甲殻類や魚が多く、日本では特に牡蠣が多く報告されています。
乳児の場合、離乳食の開始に伴い、親が一つ一つの食品に気を配りながら食事を管理するで、症状が出た際に親が特定の食物との関連を疑うことも少なくありません。ところが、厄介なのは大人の場合です」
国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部の森田英明氏
大人のFPIESの注目すべき特徴は、『それまで問題なく食べていた食品が突然食べられなくなる』ことだ。
「ある食材が突然食べられなくなるなんて、みなさん想定しないから、“たまたま、あたったんだ”と考えがちです。特別な病気だと思わないですよね。前述したようにFPIESは自分の免疫機能が反応して発症するものです。でも人は自分の体内で起きている問題だとは思わずに、そのとき食べた物の方が悪いと考えてしまいます。そのため『次は大丈夫』と、原因となる食品を再び摂取することも少なくありませんし、診断を受けるまでに時間もかかります」
ノロウイルスなどの感染性胃腸炎との違い
症状がそっくりな、(ノロウイルスなど)感染性胃腸炎とどの点が違うのだろうか。
「厳密な区別が難しいのですが、違いをあえて示すならば、ノロウイルスによる胃腸炎は、ウイルスが体内で増殖するため1〜3日間症状が続きます。
一方FPIESは特定の食品を摂取した数時間後に症状が出ますが、翌日には回復するケースが多いです。またノロウイルスは加熱でリスクを減らせますが、FPIESは加熱した食品でも症状が誘発される可能性があります」
さらにFPIESの診断が難しいのは、「通常のアレルギー検査では異常がない」点だ。
「FPIESは、IgE抗体が関与しないため、通常のアレルギー検査では診断できません。診断には経口負荷試験を行うのですが、これは医師の監督のもと、少量の『疑わしい食品』を摂取してもらい、症状の出現を確認する方法です」
このFPIES、まだまだ不明な点が多いようだ。
「現時点では、成人のFPIES患者の診断基準は確立されていないことや、FPIESの発症メカニズムが不明であること、成人患者の症状は小児のFPIES患者の症状と少し異なることなどから、これらの患者が小児と同じFPIESと診断して良いのかなど、まだ研究が必要です」