人の命のはかなさを実感
救命の現場で働き、多くの経験が出来たという高田さん。これからは、当事者だった自身の経験を活かしてひきこもりの支援をやってみたいと熱く語る。
「ひきこもりらしき方の家に、現場として行ったこともあります。病院にも行っていないから、どのくらいの病気がどれくらい進行しているのかもわからなくて。病状がかなり進行していたようで、救急隊として出来ることは限られました。
不慮の事故もあるし、人の命のはかなさを実感します。今、無事に生きていられるのは当然ではないと思わされることは多いですね。誰か1人でもいいので、ひきこもりの人が立ち直る手伝いをできないかなって。自分がある程度の年齢になって、人生の折り返し点を意識するようになってから、ずっと考えています」
公務員であるためボランティアとしての範囲だが、情報を集める過程で知ったひきこもり支援のイベントに思い切って参加してみたそうだ。
カウンセリングが主体の現在の支援とは少し違うアプローチの支援を考えている。
「人間も本来、ただの動物なので、ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、ちゃんと運動して。『早く就職して自立しないと』みたいな社会人としてのハードルを一旦忘れて、まず動物として健全に生きるための支援をする居場所を作れないかなと。
自分1人だけで考えていても、同じところをグルグル回っちゃって、ほんと良くないですよ。まだ何も具体的な活動には繋がっていないので偉そうなこと言えないですけど」
ひきこもりと救急隊員という対極の世界を経験してきた高田さんだからこそ、伝えられることがあるはずだ。
〈前編はこちら『勉強もスポーツもできた高3生がある日突然、自転車で自宅玄関に突っ込み、そのままひきこもりに…』〉
取材・文/萩原絹代 サムネイル/Shutterstock