両親のケンカが絶えなかった家庭

緒月さんの左肩から手の甲にかけて、2匹の蛇が絡みつく彫り物が入っている。タトゥーを入れたのは44歳、両親の死後のことだ。

「蛇は嫌いだったんです。お母さんから『お前は、蛇みたいに性格がしつこい』って言われ続けていたので。でも両親が亡くなったとき、新しい人生を歩き始めるつもりで入れました」

嫌いだった蛇を彫り入れることで、緒月さんはそれまでの自分と決別する覚悟を示したという。

緒月月緒さん
緒月月緒さん

「18歳で風俗業界に入るまではとにかく家事とアルバイトをしていましたね。風俗を始めたのも家が貧乏だったから、本当にそれだけですよ」

喧嘩ばかりだったという両親。母親は口が達者で、1人目の父親は口喧嘩で負けそうになるとすぐに暴力をふるったという。緒月さんが小学校3年のときに離婚した。

父親は暴力的だったものの、子どものことは可愛がってくれた。両親の離婚後、スナックで働き始めた母親に代わり、緒月さんは家事をこなすようになる。

「小学校が終わったら家に帰ってご飯を炊いて、洗濯物を取り込んで皿洗いして、弟と妹を保育園に迎えに行って…。家事をしていないと怒られるから、友達とも遊べなくなった」

母親は離婚後、すぐに新しい恋人を家に招き入れた。1人目は働き始めたスナックで出会った年下の男性だったという。

「お母さんは43歳で、恋人は24歳。この人とも2、3年で別れちゃいましたけど」

母親の恋人とは、苦い思い出もある。

「小学校5年生のときかな、その人に私、身体を触られたり、つまり性暴力を受けていたんです。誰にも相談できないから『自分で解決するしかないんだ』と思って……。ある日包丁を向けて拒否しました。後にも先にも人に包丁を向けたのはあのときだけです」

それをきっかけに性的な虐待は終わり、その後すぐに母親とその男も別れたと言うが、緒月さんの心に傷が残ったのは間違いない。