「農家を“犯人扱い”したり、敵視するような方が出てくることを危惧していた…」 

「万人直耕」の書をしたためた男性は「いばらき有機農業技術研究会」の松岡尚孝会長だ。

「これは江戸時代中期の思想家、安藤昌益の言葉です。これはすべての人が直接農業に従事し、上下の身分はなく、人間はみな平等というのが自然な社会の姿と説いた言葉です。私自身は有機農業の技術を農家に教えたりしています。

コメや野菜の価格高騰で、中には農家を“犯人扱い”したり、敵視するような方が出てくることを危惧していたこともあり、『百姓一揆』で農家の声を届ける活動に賛同しました。

日本の農業従事者の平均年齢は69歳と言われていて、このままでは成り立たなくなりますから、この活動で少しでも若い子たちが興味を持ってくれたらとも思います。また、『食』を見直すきっかけになればいろいろなところが変わるかとも思います。

これまでは作物を買い叩かれることが多かった農家も、例えば水戸市など茨城県内の複数の市の小学校では有機野菜を使用したオーガニック給食の提供が始まっていて、そこに卸す農家は高い金額で買い取ってもらえます。子どもにだけはなるべく良い物を食べさせたいということなのですが、農家目線でいえば、買い叩かれず安定した供給先になりますからね」

「いばらき有機農業技術研究会」の松岡尚孝会長(写真/集英社オンライン)
「いばらき有機農業技術研究会」の松岡尚孝会長(写真/集英社オンライン)

まさに「百姓」の平均年齢の69歳の男性は、山形県から駆けつけた。

「私自身は会社員ですが、実家がコメ農家でした。山形県の庄内地方のつや姫、雪若丸、はえぬきなどのブランドで有名な、いわゆるコメどころです。全国各地でコメ農家が減っているように、うちのようなコメどころでも離農者は増加していく一方です。

私の村でも代替わりができず、(耕作放棄地を出さないために)現役の米作農家に委託するなどの対策はしていますが、それでも年々減っていくのを目の当たりにしています。コメ農家よりも他の仕事をする方が全然割がいいんですから、みんな継がずに他の仕事をします。

これはコメ農家に限ったことでなく、農村というのはそれがひとつのコミュニティとして横のつながりも密に助け合っていましたが、今はそのコミュニティ自体が壊滅しつつあります。そうしたことにも危機感を覚え、活動を応援していこうと思い参加しました」

山形県の有名なコメどころの出身の69歳の男性(写真/集英社オンライン)
山形県の有名なコメどころの出身の69歳の男性(写真/集英社オンライン)

一揆は農家だけの生活に関わる問題ではない。今では多くの人がそう実感しているからこそこれだけの人が集まり、行動をともにした。「お上」が放置し続けて招いた国難のツケを払わされるのは国民だ。国が動くことを願いたい。 

(撮影/村上庄吾)
(撮影/村上庄吾)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班