遺族年金に配偶者控除…矛盾はらんだ税制の数々

退職金のほかにも見直すべき税制度はたくさんあると丸之内教授は指摘する。

「例えば、遺族年金制度。現行では、夫が亡くなった専業主婦の年金は非課税なんです。それだけでなく、社会保険や医療関係にも影響がある。これは、独身でこつこつ働いてきた女性の年金と比較するとかなりの差があり、以前から『不公平ではないか』という声があがっています。

あとは、今の60代から70代って年金だけでは生きていけないので、退職後も働いている人が多い。そうすると、『年金生活者』と『年金と給与で生活している人』を比較しても、後者はダブルで控除を受けているんです。配偶者控除も含め、昭和の在り方のまま残っている制度は多々あります」

遺族年金や配偶者控除など、見直さなくてはいけない税制は退職金課税制度だけではないという。

「実際、退職金課税がかかるのは、ほとんどが大企業勤めの人で、中小企業は税金がかかるほど退職金をもらえない場合も多く、退職金自体を払えない会社だってあります」

退職金以外にも今後、課税・増税される可能性のあるものはあるのか―。

「消費税ではないでしょうか。正直、消費税って一番公平なんです。例えば金塊をたくさん持っていて、相続税をごまかした人でも、その金塊を売って、お金をいっぱい使ったら消費税で税収できる。

今、一人一人の金融資産を把握して税金をもらうのが難しい面があるのなら、財産がたくさんある人からもらう消費税をあげるのが一番の手なのではないでしょうか」

財政難にあえぐ日本。財政検証が公表された今国会で、年金とともに税制改革も大幅に取り組むのか。石破内閣の手腕を見守っていきたい。

取材・文/集英社オンライン編集部

石破茂首相(写真/自民党広報Xより)
石破茂首相(写真/自民党広報Xより)