地方にもタワマンの波が押し寄せる

タワマンの総数が圧倒的に多いのは東京です。次いで多いのが大阪、神奈川、兵庫、千葉、埼玉といったところ。いずれも日本の中では特に人口が密集しているエリアですが、実はそのほかの大部分の道府県にも、すでに多くのタワマンが建設されており、その数は少しずつ増加し続けています。

原則として、タワマンは駅前・駅近の好立地に建設されるため、新幹線の停車駅周辺などには高確率でタワマンがそびえ立っています。

地方でタワマンが増えていることには、いくつかの理由が考えられます。まず、デベロッパーが都心部で新築のタワマンを供給できなくなり、地方に流れてきているというのが一点。加えて、自治体のニーズも挙げられます。

都心ほど人が多くないエリアにわざわざタワマンを建てる必要があるのか、と思われるかもしれませんが、多くの地方都市では郊外から市の中心部に人口が回帰する現象が見られています。

一人暮らしが困難になり、車の運転も難しくなった高齢者の場合、利便性の高い駅前に移り住んだほうが安心・安全です。自治体としても、タワマンが建つと人口が増え、地価の上昇も見込めますし、人口密度が高くなるため行政効率がアップ。

つまり、コンパクトシティ計画の促進に役立てることができるため、タワマンを歓迎しているケースが多いのです。

他方で、兵庫県・神戸市は2020年に市中心部におけるタワマン建設を規制し、大方の流れに逆行する動きを見せています。中心部にはタワマンよりもオフィスや商業施設を設けることを目指し、近郊のベッドタウンにテコ入れすることで、市全体にバランスよく人を呼び込もうという狙いがあるもよう。このように、生き残りをかけた自治体の都市計画もさまざまです。

地方都市のタワマンは、そのエリアの中の高額物件であることは間違いありませんが、東京などの一等地物件と比較すると、かなり手の届きやすい価格設定になっています。2025年時点で、都心にある新築タワマンの販売価格は1億円をはるかに超えています。

タワマンは管理費や修繕積立金といったランニングコストも、普通のマンションの1.3~1.5倍程度高くつくので、かなり世帯年収が高くなければ住み続けるのが難しいものです。

これに対し、地方都市のタワマンは高層部を別にすると、1億円未満で買える住戸もたくさんあります。もちろん、ランニングコストは高額なので、地元でも裕福な層がターゲットになりますが、極端な富裕層でなくとも、駅近・新築のタワマンが買えるのは魅力的です。

都心部では、一等地のタワマンに住んでいることが一種のステータスになっていますが、それは地方都市でも変わりません。2030年以降もタワマン人気は続き、タワマンならば不動産の価値が毀損しづらいという状況が続いていくでしょう。

さて、ここまで少し先の未来に起きているであろう変化を予測してみました。これはまだ、変化の一端をかいつまんで取り上げただけに過ぎません。

いまだに都内でもベイエリアではタワマンの建設が止まらない
いまだに都内でもベイエリアではタワマンの建設が止まらない
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長嶋修●ながしまおさむ/さくら事務所会長、らくだ不動産顧問、日本ホームインスペクターズ協会理事長、さくら事務所会長。らくだ不動産顧問。日本ホームインスペクターズ協会理事長。国交省・経産省等委員歴任。多数のメディア出演 ・講演・出版・執筆活動で政策提言や社会問題全般。

文/長嶋修 写真/shutterstock

『2030年の不動産』(日経BP/日本経済新聞出版)
長嶋修
『2030年の不動産』(日経BP/日本経済新聞出版)
2025年3月11日
990円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4296120260

【内容紹介】
85%の地域が下落する?――不動産「三極化」時代に備えよ!       

異次元の不動産格差時代がやってくる。人口減少、金利上昇、外国人投資家の急増、気候変動――マクロな変化が市場を根底から揺るがす。

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市場のルールが変わる今、正しい知識がなければ、大きな損失を招く。
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◆本書の内容より
・下がりにくい物件、高騰する物件の4条件とは?  
・国道16号の外では売るのも貸すのも難しくなる    
・住宅ローン金利はこれからどうなる?     
・2001~03年、2010~14年竣工の中古はなぜ狙い目なのか?
・和光市、藤沢市、堺市北区…これから注目のエリアは?  

【「不動産のあれこれ三極化診断」がダウンロードできるQRコード付】

【目次】
はじめに 「グレート・リセット」にどう備えるか

序章
2030年の不動産市場を揺るがす7つの変化

第1章 異次元の不動産格差時代がやってくる
第2章 2030年、マンションの選び方はこう変わる
第3章 2030年の戸建市場の行方
第4章 2030年に“地価が上がる”地域とは?
第5章 2030年の住宅コストと不動産投資

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